交通事故患者による腰下肢痛と痺れのMPS症例
一週間ほど前に、交通事故による負傷で治療中だと言う50代男性が来院した。

今年の2月1日に対向車線の自動車が雪でスリップし、正面衝突で負傷した。
エアバッグが開き、両膝には打撲と裂傷を負う。
事故の翌日から首と腰の痛みが起こり、車の運転をすると右下肢に違和感が出るようになり、整形外科医院に受診する。
X-Rayでは異常なしで、鎮痛剤と湿布薬を処方され、週に4日の割合で首と腰に電気治療を続けてきた。

事故から2ヶ月が過ぎて、首が快方に向かっているのに腰は悪化するだけだった。
体重も2kgは減った。
とうとう、4月6日の朝、徐々に右の腰殿部から下肢後面と足底までの痛みとしびれが強く出はじめて歩けなくなった。
この事態に整形外科医は無言だったらしく、この患者さんは不安を抱えて当院にみえた。

通常的には、こうした症状にはMRI検査などと進め、年齢的には椎間板異常が十分に予測される結果に対して「椎間板ヘルニア」の診断が行われるのだろう。
だがX-Rayで異常もなく、主治医の整形外科医は太鼓判を押している。そんなわけで、今さら下肢に痛みとしびれが出たと言われても、困惑するだけだったのかもしれない。
何しろ、筋・筋膜問題は端から想定外なわけだから。

この患者さん、奥さんの運転で付き添われて4月7日に来院した。
立位で2~3分すると、右下肢の痛みとしびれが起こる。座位も辛い。
増悪因子は立位と座位で、緩解因子は臥位である。

私はよく患者の歩行をみる。
歩行を見るというよりも、歩行の動きの中に内圧の変動したストレス軸をみるのだ。
実際は、見るというよりも「見ないでみる」と言ったところだろうか。
ストレス軸は重力に対して流れる「圧変動」の結果でもあり、見ようとする意識がそこに向かうと観ることが難しい。こうした感覚はなかなか文字にもしがたいところがある。

この患者さんは右肩から股関節部位までに強固なストレス軸がある。この軸は仰臥位での圧伝導でも、引き伝導でも、消えることも変化することもない。
足背動脈は触れる。右アキレス腱反射が消失している。右のハムストリングや腓腹筋のトーンの低下がある。深部反射は筋紡錘反射でもあり、筋のトーンが低下すると腱反射も出にくくなることがある。
中殿筋と骨盤隔膜にいくつもの圧痛点があり、短腓骨筋には索状の硬結がある。
体幹の右側を貫く強いストレス軸に加えて、頭蓋リズムも失調している。

あの強固なストレス軸をリリースし、頭蓋リズムを回復するのに4日間ほどかかったが、5日目にはしびれも解消し仕事に復帰できた。
一週間が過ぎると、ハムストリング、腓腹筋のトーンも回復に向かい、アキレス腱反射も正常に起こるようになった。

この症例はMPSと圧変動のリリースに焦点を当てて治療を行っている。
圧変動は、見ないでみると、みえてくる。
こうした内圧の変動は運動連鎖を障害し、少なからずMPSと相関しているのではないかと思うのだ
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by m_chiro | 2008-04-16 13:26 | 症例 | Trackback | Comments(4)
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Commented by アダピー・タケウマ at 2008-04-24 15:33 x
カイロプラクティックは科学的なプロセスをふんでいるので、他の療法と違うということを聞いたことがあるし、私自身も患者さんにそのように説明することがあります。しかし科学的な手法というのは仮説を立てて、それにもとづく結果を想定して実験するものと思います。基礎研究においてはとても大切なことと思いますが、臨床の場においては、仮説はともすると期待や思い込みに変わり、正確な状態把握を曇らせることもあります。
見ないで観るという感覚、まだよくわかりませんが、解るようになるよう精進していきたいと思います。
Commented by m_chiro at 2008-04-24 22:47
タケウマさん。見ないで観るというのは、見るという意識がそこに働くと意識の向かった先しか見えません。全体の動きを同時に見ると、逆に問題のある箇所、動きの異様な部位が浮き彫りにされるように見えてきます。だから見ようと思って見るのではなく、視点を一箇所に集中しないで、俯瞰するように観るとよく見えるように思います。

私は、今、徒手医学会の学会誌の編集作業に入りました。査読が終わり、投稿者とのやりとりでバタバタしています。目が回りそうです。
そのうち又ゆっくり話しましょう。
Commented by sansetu at 2008-05-01 15:23
守屋先生、初めまして。sansetuこと萩原です。加茂先生の記事へのコメント、まったく同感です。それと「見ないように見る」はとても武道的ですね。先生は武道をされているのですか。私も空手の組手の時、この見方というか、感じ方を使っています。
内圧、運動連鎖、興味深いです。
Commented by m_chiro at 2008-05-05 10:40
萩原先生、コメントありがとうございます。先生のニセ科学に対する見解も身にしみながら興味深く拝見しました。
私が関心を持って取り組んでいることにも眼を留めていただいて大変光栄に思います。
今後ともご指導下さい。
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