警告系では脳幹に注目したい
生体は内外の環境の変化や異常に対応して、生存してきた。
そのためには環境の異常に対して適切な反応を起こし、行動をとらなければならない。
この時々の異常や変化によってもたらされた情報を、脳は警告として受け取る。
そして、脳は変化に適切に対処するために指令を出す。
このシステムが生命保持に役立っている。

ところが、異常シグナルは身体的症状を伴って、不快や不安、恐怖などの情動反応に転換される。
すると脳は危機から回避するように指令を出す。
こうして生体の恒常性(ホメオスターシス)が維持されている。

脳の警告系は、生体維持における重要なシステムと言える。
この警告系の重要性は、医科学における共通の認識である。
それにしても警告系は、あまりにも複雑である。
その複雑さ故に、いまだ未解決ともされているのだ。

生体の警告系については、1985年と87年に「脳の生体警告系シンポジウム」が開催されている。
それによると、生体の警告系における今日的研究課題は、次の6項目に集約されている。

1.異常環境を感知する種々の生体センサー
2.生体センサーに作用する内在物質
3.警告信号の神経性および体液性の伝達機構
4.警告信号の脳における受容部位
5.脳での信号処理機構
6.脳による神経性および体液性調節系を介する回避機構

警告系の研究課題を展望すると、その中心的テーマは痛みである。
つまり警告系の神経路と制御メカニズム、そこにかかわる基礎的な内因性物質が研究対象である。
警告系のメカニズムでは、脳における受容部位とその信号処理機構に関する研究である。その受容部位についてはここに興味深い論文がある。
第一回・「脳の生体警告系シンポジウム(1985年10月)」で発表された山田仁三教授の論題「痛みの上行路」である。「まとめ」のところに、次の一文がある。

ヒトの触覚、視覚および聴覚などは、大脳皮質にそれぞれ一次中枢を持っているが、痛覚にはそれがない。したがって、痛みは触覚、視覚および聴覚のような純粋な知覚系に属するものではなく、種々の知覚現象を痛いと解釈することから始まるようにみえる。換言すれば、種々の情報を種々の領域で受ける大脳皮質が、いま個体に“のっぴきならない状態が生じている”と解釈することにある。このように考えると種々の条件で、すなわち年齢、性、民族、文明、知能、精神状態および薬物などによって、種々に修飾されている現実をよく理解できる。

この論文の中で、山田教授は脳幹領域に注目している。
脳幹領域には上行路が終止し、そこから間脳を経て対応するそれぞれの大脳皮質に投射される。こうした活動の変化は局在的なものではなく、比較解剖学的な脳の新旧にかかわらずに広範囲に及んでいることも指摘している。
また、脳幹領域では脊髄に向けて下行線維を出し、一種の「脳幹関門」を作っている、としている。脳幹関門には、上行性および下行性線維を出す網様体内に存在する多数の「閉鎖回路」が関与している。
ここで注目したいことは「閉鎖回路」と「脳幹関門」に関する言及である。
反射的に行われる純粋の警告系の信号の授受は古い脳で行われ、大脳皮質では学習を踏まえて痛みとして修飾され解釈されるのではないだろうか。

閉鎖回路でやり取りされる情報が、誤情報に基づくようになると、神経系のプログラムの信号に異変が起こり、その信号情報が辺縁系の情動的修飾を得て皮質に投射される。身体マップには誤情報のマップがつくられる。脳幹からの情報投射のフィルターが歪んでいないか、そこに注目して行きたいと思う。
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by m_chiro | 2008-03-06 00:00 | わん・にゃん物語 | Trackback | Comments(0)
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