内臓刺激からくる関連痛
あることから、ふと昨年6月に診た70代の老婦人のことを思い出した。

この婦人は、2年ほど前から腰から右股関節、大腿部にかけて痛みだす。
長く歩くことが出来ない。500メートルが限界だと言う。
無理をすると辛くなるので、大事を心がけている。
整形外科に通院中で「軽い椎間板ヘルニアからくる痛み」と言われている。
痛み出すと注射と坐薬で凌ぎ、夜間に痛むと病院の夜間診療に駆け込む。


初診で、MPS(筋・筋膜性疼痛症候群)と判断した。腸腰筋や大腿四頭筋に圧痛が随所にあった。特に右の腹部には冷感が強かった。
圧痛をリリースすると、ずいぶん軽るくなった、と喜ばれる。
その日は食欲も出て、よく眠れたようだ。

そんな経過を数回繰り返したある日の夜に、この老婦人から電話があった。
午後から町内会の集会で正座していて、夕方から台所に立っていたら右の大腿部が痛み出し、安定剤と痛み止めを服用したが治まらない。夜分だが診てもらえないだろうか、ということだった。

いつものように圧痛をリリースしたが、痛みに変化はなく歩行がつらい。
見逃したTPがないかと再び触診していたら、なんと鼠径部の内側下方にふくらみを触れる。
腸ヘルニアかもしれない。
そのまま紹介状を持たせて夜間診療に向かわせた。

案の定、ヘルニアだった。しかも、とても見つけにくい場所に出ていたらしい。
結局、この婦人は手術した。その後の経過は良好で、あれほど悩まされた股関節と大腿部の痛みから解放されたようである。
整形外科医は椎間板ヘルニアと診断し、私はてっきりMPSと思った。
が、実際は腸ヘルニアからくる関連痛だった。いよいよ限界になったのだろう。
あれ以来、快適に過ごしている、という知らせが何よりの救いである。

内臓からの侵害情報は、内臓と遠く離れた体表面に過敏な感覚や痛みを起こすことがあるとされている。こうした関連痛は、傷害された内蔵を支配する病変臓器と同じ脊髄分節の皮膚に起こるとされているようだ。痛みには情動反応と同時に、逃避反射として交感神経による緊急反応がつきまとう。当然、圧痛点やTPもできるのだろう。
なぜ、圧痛やTPができるのか、そんな思いがいつもその裏側に向く。
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by m_chiro | 2008-03-04 23:41 | 症例 | Trackback | Comments(0)
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