脳が創る解答表(1)  
人間同士のいざこざは、後を絶たちません。話せば分かるのにと思っても、なかなかそんなに簡単には行かないのが世の中なのでしょう。

そう言えば、養老孟司先生もベストセラーになった「バカの壁」に、「話せばわかる」は大嘘、と書いていました。話しても分かり合えない。これは「情報」に対する姿勢の問題だ、と養老先生は言います。

さて、ここで「情報」というキーワードから、もう少し脳を知る必要がありそうです。一体、脳は何のために、何をしている器官なのでしょうか? 

1967年に「狼に育てられた子」という本が話題になりました。実際にあったとされる事件を子供の写真入りで紹介し、発達心理学に大きなインパクトを与えました。その子供は1912年に狼にさらわれ、8年後に人間に救出されたのですが、その後は人間に育てられます。
でも、二人は人間の思考や行動を獲得しないまま、保護されてから10年以内に亡くなりました。

この事件は、子供の発育環境の重要性が強調されております。でも、狼が子供をさらうなんてウソっぽい話ですね。きっと、森に捨てられた子供を狼が育てたのかもしれません。話の真偽はともかくとして、脳の発達と環境の問題については、重要な示唆が含まれているように思います。このような例は、いくつも報告されています。いずれも、人間としての必要な「情報」が極端に遮断されたケースです。

こういったことが示唆するのは、ヒトが狼に育てられると、唸ったり生肉を食べたり、野生動物のように育つということです。なぜかと言えば、それはヒトの脳が、進化の過程を通して動物の脳である古い脳を既に持っているからです。

下の図は、脳の縦断面をイラストにしたもので、進化発生学的に脳の特色を示しています。これはP.D.マクリーンというアメリカの神経生理学者が描いた有名な図です。「三位一体脳」として知られるもので、脳を階層性という視点から捉えています。

c0113928_0252194.jpg

その階層構造は、最下層に反射脳として爬虫類脳、その上位に情動脳としての哺乳類脳、そして最上位に理性脳としての新哺乳類脳の三層構造になっているとするものですが、わかりやすく言えば三階建てのビルです。その三層構造の特色も、進化発生的に作られてきた階層性にあります。

爬虫類の脳、哺乳類の脳を階層的に重ねて、その上に人間の脳である大脳新皮質が形成されました。でも、犬や猫の哺乳動物にはヒトの新皮質はありません。ですから、人間に育てられたからといって、動物がヒトのように成長することはできないのです。ヒトは動物的になりえても、他の動物がヒトのようにはなれない、ということです。何十億年という長い年月をかけて獲得した遺伝子の違いです。


 
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by m_chiro | 2008-02-21 23:59 | BASE論考 | Trackback | Comments(0)
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