膜系の連鎖
40代の男性Aさんと、30代の男性Bさんを前後して治療した。
二人とも同様の膜系の緊張の連鎖を持っていた。右の上肢から腹直筋にかけて流れるような緊張がみられる。でも症状は全く違う。

Aさんは胸が苦しくなり救急で診察を受けた。突然、発作のように胸が苦しくなって病院に駆け込むことや、救急車を手配して診察を受けることが数回あったそうだが、問題を指摘されたことはない、と言う。胸骨筋にTP、烏口突起の周辺にも圧痛点がある。右腹直筋には強い緊張と圧痛がある。13年前に椎間板ヘルニアの診断を受け、それ以来の腰痛もある。

Bさんは左の腰殿部痛で、歩行や特に動作のはじめが辛い。思い当たるようなきっかけは無い。Aさんと同様の膜系の緊張がある。左の腰背部の筋群のトーンが低下して弛んだ状態である。

膜系の連鎖の中にある個々の筋は、筋膜によって連鎖し一定の方向に流れるように連なっている。筋膜は骨に付着する。あるいは、そのまま別の筋膜へと連鎖して一連の膜の道筋を作る。そう主張するThomas W. Myersは「Anatomy Trains」で、AさんBさんと同様の筋膜連鎖を下図で紹介していた。前腕の屈筋群から腹直筋までの繋がりは、頭を後方に反らすと舌骨下筋群は胸骨を介して腹直筋に連鎖する運動系でもある。
c0113928_23102598.jpg

Aさんは緊張した一連の筋・筋膜に圧痛を持っている。胸骨筋にはTPがある。胸骨筋のTPは心筋梗塞や狭心症による腸骨下の痛みとよく似ており、まるで心臓病のような振る舞いをする、とされている。体幹の動作による痛みの増強はみられないが、烏口突起周辺と腹直筋に強い圧痛があり、TPをモニターしながら圧痛部位と同調させてリリースした。

こうした患者さんへの筋・筋膜ストレッチの指導については、筋紡錘への圧縮と伸張刺激による筋反応を調べれば、ストレッチが必要な筋か否かを知ることができる。また、筋膜については、どの方向へストレッチすべきかを判定できる。やみくもに行うストレッチなら、しない方がいい。

Bさんは痛みの領域の筋群が弛緩している。私はこうしたハイポ・トーンの筋に直接アプローチすることはしない。
筋活動の遅延をリセットしてから動きを確認すると、立ち座りや歩行は改善している。だが、体幹の左回旋で左腰部~側腹部に痛みが起こる。緊張した膜系連鎖を辿ると、前腕部の二本のラインが際立っている。その中で反応するポイントを押さえて痛覚ポイントと同調させた。これが効果的で回旋動作も可能になった。

Bさんに「腕となんか関係あるんですか?」と問われたが、「どうもこの二本のラインと連動しているようだね」と答えるしかなかった。
するとBさんは驚いたように「ボクはバンドをやっていて、ベースを弾くんですよ。それってベースを弾くときの筋肉ですよ。腰の動きもそうだ」。
そうかもしれないね、と言うしかない。
やはり脳と筋・筋膜系を結ぶ情報系入出力のトラブルなのだろうが、私にはその確かな機序はよくわからない。
いつもその理由を求めている。
TPや圧痛点は、カイロプラクティックで言う「椎骨サブラクセーション」同様に、原因ではなく結果に過ぎないのではないかと思うのだが...。
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by m_chiro | 2008-02-14 23:18 | 症例 | Trackback | Comments(2)
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Commented at 2008-02-15 07:31
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Commented at 2008-02-15 17:31
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