眼には見えないものへの評価
これまで腰痛や坐骨神経痛は神経の機械的圧迫説が主流であった。
いや、まだ現在進行形と言うべきなのかもしれない。
椎間板の変性や骨の変形に原因を求めているのである。
したがって、治療は機械的圧迫を取り除くことがすべてだった。

ところが最近は、眼に見えない原因がわかってきた、と言われるようにもなった。
それも腰痛専門の著明な教授などもメディアで発言しだした。
「心理・社会的因子」は、腰痛の原因因子として理解されつつあるように思われる。
しかし、これまでの通説であった機械的圧迫説が崩れなければ、その先も見えてはこない。
昨今は、そんな注目に値する論文が発表されているようだ。

「Spine」誌に発表されたBoosらの研究論文である。
Boosらは椎間板ヘルニアの危険因子を全部揃えて、手術する人と、同じようなプロフィールを持ちながら全く痛くない人のMRIから76%もの椎間板ヘルニアを見つけた。
そして、手術する人と全く痛くない人の差は3つしかない、とした。

ひとつは、手術する人にはヘルニアによる「神経の圧迫が非常に強い」こと。
あとのふたつは、全く眼には見えないものだ。
そのうちのひとつが「work perception;仕事への満足度」である。
仕事の受け止め方の問題で、満足度、上司の評価、リストラの危機感など、仕事にかかわるストレスが関与するらしい。
もうひとつが「psychosocial factor;精神社会学的因子」である。
つまり、自身の性格、不安や抑うつ、結婚生活上の問題を抱えていることである。

これらが手術する人と痛みのない人を分けており、薬剤の効果や死亡率にまで影響しているらしい。
医療従事者は、ストレスへの対処をきちんと考える必要があるようだ。

それでも気になるのは、Boosらが椎間板ヘルニアによる「神経の圧迫が非常に強い」ことを「痛み」として捉えていることである。
その場合、手術の選択枝が考慮されるというのだが、「神経の圧迫」が「痛み」とイコールだという生理学的根拠は聞こえてこない。「機械的圧迫」の程度を、痛みの強度で推し量っているだけではないのだろうか。
それが痛みではなく「脱落症状」を呈するケースとなれば、外科的対応もうなずけるものがあるのだが。
ともかく、無駄な外科的アプローチだけは避けるべきだろう。
もっと多角的なアプローチが必要なのである。
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by m_chiro | 2008-01-08 00:25 | 雑記 | Trackback | Comments(7)
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Commented by junk_2004jp at 2008-01-08 19:53
こんにちは。

>腰痛患者には外科的アプローチだけでは不十分で、もっと多角的なアプローチが必要なのである。

どんな外科的なアプローチ?
Commented by m_chiro at 2008-01-08 22:15
何か言葉足らずでしたね。
Boosらは、椎間板ヘルニアで手術するのは「神経の圧迫が非常に強い」こと、をその一つにあげているので、こうした外科的な対応を指して書いたのですが、結局はBoosらも「椎間板ヘルニア=痛み」の図式から抜け出せないのでしょうね。
「神経の圧迫=痛み」が前提にされているわけですから、誤解のないように補足しました。
Commented by junk_2004jp at 2008-01-08 22:23
そうだろうと思いましたが・・・・

でもなぜ、圧迫が痛みを起こすと思うのでしょうかね。麻痺ならわかるのですが。
Commented by m_chiro at 2008-01-08 22:55
先生、言葉足らずにヒントをいただき、ありがとうございます。
なかなか納得させるものを書くのも一苦労です。
お陰で書くことも勉強させられます。感謝です。
Commented by junk_2004jp at 2008-01-09 00:07
大きな椎間板ヘルニアが存在すれば椎間板手術の適応と判断してよいのであろうか?南カリフォルニアの研究者らによれば、答えは『No』である。

http://www.tvk.ne.jp/~junkamo/new_page_387.htm
Commented by m_chiro at 2008-01-09 00:56 x
先生、この文献にリンクさせてもらいました。
Commented by 腰痛アドバイザー at 2008-01-26 17:38 x

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