根性痛
神経根が、実際に圧迫されているケースをどう理解したらいいのだろう。
加茂整形外科医院の加茂先生は、孤軍奮闘と言った感じで痛みの生理学的理解をホームページ上で啓蒙している。 私も大いに啓発され、勉強させていただいた一人である。また、数年前には加茂先生にカイロプラクティック業界のセミナーで講師をお願いしたことがあった。同業の者たちも痛みを生理学的に理解することを学んだと思いきや、根性痛の議論になるとまたぞろカイロプラクティックの原理主義が頭をもたげるようだ。 あの菊地臣一教授さえも、近著「腰痛」の中で、次のように述べている。 圧迫性神経根障害の病態は2つに大別できる.すなわち,知覚低下や筋力低下に代表される麻痺と疼痛(腰痛や下肢痛など)である。麻痺は神経根の伝導障害という病態として捉えられる.一方,疼痛の発生機序には,深く関与している組織として後根神経節(DRG)が注目されている. 神経根の圧迫という現象に、麻痺と痛みという生理学的には全く正反対の病態があると言われても、???で頭の中は混乱するばかりである。 プラハのチャールズ大学で神経学を講じているKarel Lewit先生は1966年に「Manipuletive Therapy in Rehabilitation of Locomotor System」(邦訳「徒手医学のリハビリテーション」;2000年)という著書を著した。この本が東欧、ヨーロッパ、アメリカの医療関係者に影響を与え続け、第三版が刊行されるまでになった。このKarel Lewit先生は「根性痛」の項目の中で次のように記している。 まず最初に,神経の圧迫は単独でも不全麻痺や感覚消失を引き起こしはするが,痛みは起こさないことを指摘しておくべきだろう. ......たとえ神経根がかかわっているという明確な神経学的徴候があったとしても,痛みはおもに痛覚受容器の刺激によって起こることを示唆している. 明らかに神経根が圧迫されているという神経学的徴候がみられても、そこに随伴している痛みは別の痛覚受容器からのものだと断言している。Karel Lewit先生は「トリガーポイントマニュアル」の共同執筆者Simons教授とも親交があったようだ。 加茂先生しかりで、世の中には力強いメッセージを送り続けてくれる先生方がいるものですね。
by m_chiro
| 2007-11-09 16:42
| 痛み考
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