治療の力学❶ 触診の錯覚
1984年にアメリカのナショナルカイロ大学(現ナショナル健康科学大学)での解剖実習授業に参加したとき、大学内の書店で"Manipulative Therapy in Rehabilitation of Locomotor System"という書籍を紹介されて求めた。

プラハの神経学者Karel Lewitの本(日本語版は2000年に翻訳出版された)である。
なんでもヨーロッパ、北欧では数か国語に翻訳されて読まれているという大変な名著だそうで、ちょうど渡米したときに英語版ができたばかりだという新刊本だった。
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写真が多いのでキャプションなどを読みながら眺めていた本である。
そのなかに次のような写真が掲載されていて目についた。
c0113928_18412623.jpg

どうも触診の正確さをレ線像で確認したもののようだ。
上の写真は坐骨結節を触診しているが左右差が顕著である。
ところがレ線像でその触診の正確さを撮ってみると、なんと坐骨結節は全く正常で、触診した指だけが変化しているだけである。

下の写真は逆に触診上は正常な位置関係にあるが、レ線像で確認すると坐骨結節にわずかな変位がみてとれる。

とにもかくにも触診とは正確に診るためには、大変な技術が必要なのだと改めて思った。
効き目を中心に置いて見なければ、それだけでも錯覚が起こる。
まして軟部組織を介して骨位置を正確に診るなどということになると随分と熟練が必要なことになる。

なによりも、軟部組織自体のトーンや大きさの違いが顕著に影響することだろう。
この本から得た教訓から、私は骨を触ろうとする触診法を変える工夫をすることになった。
皮膚上から身体内の組織のフロー状態に意識を向けるようになったのである。

最初はなかなか実感できなかった身体内部の状態を感覚的に捉えることが出いるようになっていったように思う。
そこから、治療で使う力学についてもいろいろと考えるようになっていったのである。
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by m_chiro | 2016-04-19 18:43 | Trackback | Comments(5)
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Commented by ポチ at 2016-04-27 20:50 x
以前、質問させて頂いたポチです。その節はありがとうございました。
このテーマの記事を楽しみにしていました。
また質問で申し訳ないのですが、身体のフロー状態とは、どの様な事でしょうか?
Commented by m_chiro at 2016-04-28 09:56
簡単に一言でいえば「流れ」ですが、徒手治療家がからだを見るときに、多くは固着した感じの部位(Fixation)、あるいは逆に過剰に動きが起こっているハイパーモービルな点に注目します。その触診の仕方も、多くはニュートンの運動力学第二法則に従うのが常道です。つまり力度・角度・速度によって動きの停滞を見ているわけです。しかし、第三法則にある「作用と反作用」に従えば、力度には反作用が伴いますから触診部位が深いところにあれば、力度や速度を増加させないと感じれません。それで分かるのは力度に対する反作用の抵抗感(力度に対する反作用の拮抗部位)だけです。ですから、触診に力度や速度を使わないで(反作用を起こさせないで)、身体の中の通り抜ける感覚(フローな状態)と停滞した状態を見分けています。過剰な動きは、必ず身体中の機能的あるいは可動的停滞の反動だと思います。その部位を身体中に探していきます。リリースできると、とても良好なフローな状態がつくられます。上手く説明できずに申し訳ありませんが、そんな感じでしょうか。
Commented by ポチ at 2016-04-28 15:30 x
早速の返信ありがとうございます。
力や速度を使わず手の感覚を患者さんの身体に通していく。正常であればスーっと通っていくけれども、異常?な箇所は停滞や過剰な動きとして感じられる。ということでしょうか?
Commented by m_chiro at 2016-05-04 09:53
そんな感じですかね...。でもその部位は単なる現象かもしれませんし、原因となっている潜象部位かもしれません。どこでその部位がリリースされるのか、そこを問題にしていくわけです。
Commented by ポチ at 2016-05-04 10:43 x
ありがとうございます。
続編、楽しみにしています。
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