SLRテストもX線写真も、椎間板ヘルニアの確認にはならない
腰痛・下肢痛の診断に用いられている簡便な徒手検査法がある。
下肢伸展挙上テスト(Straight Leg Raising Test)、略してSLRと呼ばれている。
カイロプラクティックの臨床でも定番の検査とされた。

「整形外科テスト法」(医道の日本社、2009、291頁)に、SLRの検査法とその診断基準が紹介されている。
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下肢を伸展させて挙上していくと、L5-S2レベルの坐骨神経の神経根が伸展されるとしている。
もしその部位に何らかの病変があると神経根にストレッチによる刺激が加わり、痛みを発症するというもの。
0度~35度では硬膜の動きがないので、坐骨神経への刺激は極少ない。
だから、もしもこの角度内で痛みが始まれば硬膜外病変として梨状筋や仙腸関節の病変を疑う。

神経根が動き出す前の(35度以内)で大腿後面に鈍痛があれば、それはハムストリング筋の過緊張ということになる。
椎間板病変は35度~70度の範囲内での痛みとされる。
これも神経根が伸長刺激で痛みを発症するという前提に立ってのものだが、その根拠も怪しい。
痛み刺激は受容器から送られるという原則に立てば、確固たる根拠も怪しい。
なぜ生理学的機序を逆行して末梢に痛みが起こるのか、という問題が拭えない。

100歩譲って、神経根は過敏な部位だとすれば、炎症性の問題が浮上する。
だとすれば、SLRなどで確認するまでもなく、35度以内の低角度でも痛むことだろう。
だから、動作痛に関係なく自発性の痛みが起こるはずだろう。

それを更に痛みを増強させるテストをしたところで、患者さんは心理的・肉体的苦痛を再現されるだけの話ではないのか。
要するに、SLRテストで椎間板ヘルニアの存在を確認できるわけではないのだ。

また、70度以上の角度で痛むのは、椎間関節の動きに伴うものだから椎間関節障害を疑う。
これとてハムストリング筋の硬い人や股関節などの可動性の問題でも挙上しにくい。
それ以上に無理に上げようとすれば、痛みを訴えるはずなのだが...。
SLRテストは、そんなスクリーニング・テストということになる。

腰下肢痛を訴える症状、特に若年成人の坐骨神経痛患者ではSLRの記録が要求されている。
おもしろいことに、脊柱管狭窄症の高齢者ではSLRに陽性兆候が見られないことが多いのだそうだ。


日本整形外科学会監修の「腰椎椎間板ヘルニア 診療ガイドライン」では、第3章 診断「Clinical Question 3 単純X線写真は腰椎椎間板ヘルニアの診断に必要か」の項目に、「単純X線写真で腰椎椎間板ヘルニアの描出は不可能である」と断定している。
推奨度もグレード3で、他疾患、例えば腫瘍、骨破壊性病変、外傷などを除外することの有用性が指摘されているだけである。

X線写真は、最近の腰痛診療のガイドラインでは、ほとんど推奨されていないということである。それなのに、なぜか何でもレントゲン!は廃れない。
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by m_chiro | 2016-02-07 12:12 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
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