患者さんの死
先日、地方新聞の「おくやみ」欄に、覚えのある名前も見つけた。
2年半ほど前に、3回ほど治療にみえた方である。
住所も同じだから、あの患者さんだろう。
なぜ記憶しているかというと、専門医に紹介した患者さんだったからだが、その後の報告もなく何となく気にかかっていたからだ。

経緯はこうだ。
患者さんは60代後半の女性で、一年ほど前から発症した首から肩にかけての痛みを主訴にしていた。
整形外科を受診しており、首や肩、肋骨のX-Rayで異常なし。
心電図測定もリウマチ検査も行ったようだが異常はなかった。
結局、「50肩」と言われたようだ。
鎮痛薬、筋緩和剤などが処方され、マッサージも施されている。
確かに肩の可動域が正常範囲になく、上肢の挙上に制限があった。

2度目に来院したときには「肩が動きやすくなった」と言っていたが、「他に気になることがあるんだけど…」と切り出したのだった。

2か月ほど前に下痢をしてから、腹鳴がおこるようになったのだそうだ。
空腹時には特に酷く、ガスがお腹を回っているように音がすると言う。
便通は良いいが、食欲は落ちた。体重は5㎏ほど減ったらしい。
胃腸科を受診しており、「胃腸炎」の診断が出ていた。
活性生菌剤が2種類、消泡作用や過敏性腸症候に対応する薬も2種類出ていた。
2か月も経つのに改善する気配もなく、余計に気になっているということだった。

他に、循環器クリニックでは高血圧高コレステロールで長年治療を受けている。
循環器科で毎年検査を受けているようだ。
その検査結果の記録は取ってあるのかと尋ねたら、「家にある」と言うので今度見せてもらうことにした。

3回目の来院時に、検査結果をみせてもらって驚いた。
コレステロール値など30項目の血液検査は正常値内にあったが、ひとつだけCPKが異常値である。しかも昨年の検査値の数値を一気に倍以上も越えている。

CPK(クレアチンホスキナーゼ:CK)値
は体内のエネルギー代謝に関わっている酵素の値である。
骨格筋・平滑筋・心筋や脳などに多くみられる酵素で、こうした筋などに障害が起こると血中に流れ出すためにCPK値が高くなる。

おそらく循環器科では心疾患に備えて検査をしていたものと思われるが、筋組織や脳の悪性腫瘍でもCPK値は異常値を示すとされている。
CPK値が高いと、それが骨格筋由来か、心筋それとも脳疾患由来か、3種類のアイソザイムを調べることとされているようだが問題視されなかったのだろうか。

私は専門医を受診するように勧めて、治療適応から除外した患者さんだった。

その後の経過は分からずにいたのだが、そんな経緯があり気にかかっていたために名前を憶えていたのである。

あれから2年半経って、亡くなられたという訃報を新聞で知ったわけだが、もちろん死因については分からない。
CPK値の異常値が疾患の兆しだったのだろうか…。

只々、ご冥福を祈るばかりである。
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by m_chiro | 2014-07-21 18:47 | 症例 | Trackback | Comments(0)
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