「痛みの本態」とは(三木成夫)
故・三木成夫・解剖学者の著作には、大いなる学びを頂戴してきた。
人のからだを視る仕事に就くようになって、とてもワクワクしながら学んだ書物は多くあるが、中でも三木先生の著作は今でも座右に置いてある。

三木先生は、解剖学者としても異色な存在なのかもしれない。
生きものを「過去-現在-未来」という視点に立って看破しているのだろう。
だから三木学は、ただ単に生物の個体解剖にとどめずに、生命環境を織り込んだ壮大な生命論であり形態学だ、という印象を持っている。

その三木先生が「痛み」について書かれた一文がある。
短い文ではあるが、痛みの本質を的確に表現していて分かりやすい。
1975年に「東洋医学」誌に掲載された『「ツボ」の比較解剖学的考察―東西医学の源流について』の一節である(「生命とリズム」三木成夫著)。
以下にその一節の全文を紹介しておこう。
「痛みの本態」を筋肉由来とみている三木先生の卓説である。
(赤字は私が強調した部分)

「痛みの本態」(三木成夫)
われわれの日常で問題になる痛みといえば生理学の課題である皮膚のあの「痛点」由来のそれではほとんどない。一般に、痛点刺激の痛みといえば、それは文字通り“針でつついた”程度のもので、日常の生活でそれ以上の問題となることはまずありえない。

この人類の歴史において、医術の世界を生み出すにいたった“本物の痛み”といえば、そうした皮相なものではなく、もっと根の深いものでなければならない。それは、一般の生理学教科書では「内臓あるいは深部感覚」に所属する正体不明の痛みと記載されているものであるが、われわれはこの西洋医学の盲点とも思われる内なる痛みを、実は「筋肉」に由来するものと考える

したがって、人間のからだから一切の筋肉を取り除けば、本来の医の世界はあるいは生まれなかったであろうと考える。

筋肉の強い収縮が耐えがたい痛みをもたらすことは、骨格筋ではあの“こむら返り“を見ればよい。これに対して胃けいれん・腸閉塞・結石痛、そして陣痛などはその場の内臓筋の異常収縮に、またあの拍動性の頭痛・歯痛・化膿痛などはその領域の筋性細動脈すなわち血管筋の強い収縮に、それぞれ由来するのであろう。

われわれが冬の朝、冷水に手を入れた時、あるいは間違って、熱い風呂に片足をつっ込んだ時、その皮膚に生ずる瞬間の冷温覚から少し遅れて、あの手足の芯を締め上げるように襲ってくる激痛は、とりもなおさず付近一帯の筋性動脈がいっせいに反射を起こしたものと考える。

血管系の枝分かれに乗って、皮膚より内側の津々浦々に分布するその筋肉組織は、体内に張り巡らされた、もっと精密かつ高感度の“痛覚の発生装置”ということになろう

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by m_chiro | 2014-04-03 12:25 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
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