動きのパターンが崩れるとき①
①「手が振るえるんです。パーキンソン病じゃないかと….」

先日、治療にみえた女性が「手が振るえるんです。パーキンソン病じゃないかと….」と心配げに話をされた。
「今は振るえていないようだけど、いつもではないの?」と尋ねると、「時々」だと答えた。
緊張すると振るえる、のだそうだ。

「例えば、どんなとき?」。

どうも手紙など字を書くときに振戦が起こるらしい。
手の動作時に起こる振戦である。他の部位には起こらないようだ。
鼻-指テストを行わせてみると、やはり振るえる。

「もしかして両親か誰かに、同じように振るえる人はいない?」。
「もう亡くなりましたが、父親がそうでした」。

おそらく遺伝による本態性振戦なんだろう。

パーキンソン病の振戦は静止位で振るえのが特徴的で、他のことに意識を向けたり、なにか行動を起こすと止まる。
だからパーキンソン病と違って良性の振るえではあるのだろうが、何か隠されているものがあるかもしれない。神経内科医に診断してもらうよう勧めた。

余談になるが、昨年末のことである。
業界の仲間とお茶を飲みながら歓談していたときのことだった。
話題が神経学の認知機能のことに及んで、「オリバー・サックスが書かれた本にはそんな話題が盛りだくさんだ」と話したことがあった。

すると、傍で話を聞いていたカイロの初学の女性が「その本の題名と著者を教えてください」と尋ねてきた。
「妻を帽子とまちがえた男」という本で、著者はオリバー・サックスという神経学を学んだ臨床医であることを教えておいた。
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先日、伊藤彰洋D.C.の神経学セミナーを受講した折、また彼女と一緒になった。
サックスの本を読んだらしい。
とても面白く勉強できたと感謝されたのであるが、多くの仲間にも読むように勧めているのだそうだ。
メールで感想も頂戴した。そして、今度は「レナードの朝」を読むつもり、と話していた。
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伊藤彰洋D.C.のセミナーは「神経機能学からみた臨床アプローチ」をテーマにした2回目の講座である。
1回目が痛みを中心にした体性感覚についてだったようであるが、この2回目の講座は運動制御に関わるテーマが中心である。
その意味でも「レナードの朝」は運動制御に関する予備知識をタイムリーに勉強ができるだろう。

「レナードの朝」は、20世紀初頭にヨーロッパではじまり、3年間で世界的に広がった「眠り病」の症例について書かれている。
やがて診断名は「嗜眠性脳炎」と確定されたが、流行の当時は医師によって確定診断が違った。
例えば、流行性譫妄、流行性分裂病、非典型的狂犬病、流行性パーキンソン病、流行性多発性硬化症、非典型的灰白髄炎などなど。
それだけ症状も多様であったし、後遺症に苦しむ患者さんも多かったようである。

オリバー・サックスは、臨床医として診た嗜眠性脳炎の患者に対し、パーキンソン病の新薬として期待された「L-ド-パ」を処方したのである。そして、その患者を永い眠りから覚醒させた記録の物語である。
ところが、その覚醒も長くは続かず、また元に戻ってしまう。
「レナードの朝」は映画にもなったが、ぜひサックスの物語を読むことを勧めたい。
映画では語れない病態の情報や運動制御に関する神経学の難しい基礎知識を、ワクワクしながら学べるからだ。

オリバー・サックスにとどまらず、臨床医が紡いだ症候学や病態などを書いた物語はいろいろある。
たとえば、「ER 救急救命室」というアメリカのTVドラマの原作となった本、やはりTVドラマの「ドクター・ハウス」の原作となった本などもあるが、私はオリバ-・サックスの書くノンフィクションの物語は秀逸だと思う。

こうした物語に学びながら、学びの手順を専門書に格上げしていく。これが私の勉強法でもある。
私の能力では難しい専門書を読んでも理解できない。
悲しいことに、誘眠剤効果があるくらいだ。
だから秀逸な物語は、専門書への入り口であり、バネでもある。

さて、運動制御に関するテーマは難しい。
その上いまだに専門家の間でも議論がある。
伊藤D.C.のセミナーに学んで、いろいろ見えてきたところもあり、ここで自分なりに整理しておこうと思い「動きのパターンが崩れるとき」というテーマで時間をみながら書いていきたいと思う。

続く
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by m_chiro | 2014-03-10 18:38 | 「神経学」覚書 | Trackback | Comments(0)
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