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NCA中国に行く。  ③解剖実習で遭遇したこと
この記事は、1993年に日本カイロプラクティック・アカデミー(NCA)の学生を引率して行った第一回。大連医科大学での解剖実習授業を記事にしたものです。1994年に、会誌「JS Club」に掲載されました。


NCA中国に行く。
③解剖実習で遭遇したこと


今回、特に印象に残ったことをいくつか紹介しよう。
中年の女性の腹部を開けて美しい大網を除くと、まるでウインナーソーセージを意図的に並べたように整列した小腸が現れた。
NCA中国に行く。  ③解剖実習で遭遇したこと_c0113928_1714880.jpg教授も、数十年解剖に携わってきて初めて見た、と言う。
そんな珍しい献体も、なぜこんなに規則正しく整列しているのか一緒に調べましょう、と惜しげもない。
結局、腸間膜が通常より随分と短いことが判った。
引っ張り出した小腸を離すと、すぐに元の位置に整列してしまう。
これではイレウス(腸閉塞)も起こるまい。

頭部、顔面部の解剖はなかなか難しい。馬技師が脳を取り出すデモを行った。
アメリカでのデモは、電気ノコであっという間に取り出してしまったが、今度はあの名人・馬技師の手にかかるのだ。

カイロプラクティックでは脳硬膜を重要視しているので、硬膜はきちんと残してほしい、とリクエストを出す。馬技師は大工道具のような小道具で、先ず頭蓋を外し、硬膜を奇麗に残して、大脳を取り出して見せた。大脳鎌、小脳テント、矢状静脈洞、脈絡叢、脳室、脳神経と、靭帯の神秘の究極に入り込んでいく。
静まり返る教室。言い知れぬ感動。
不思議な空間で、多くのことを感じた時間であった。

私たちは仙腸関節も見たい、と申し出た。
この強靭な関節を開くのは大変な作業である。馬技師も初めての試みだと言う。
開いて見る意味があるのか、と首をかしげる。
アメリカのカイロ大学での実習とは違って、医科大学ではカイロ的な視点を持っていないのだろう。
カイロプラクティックではとても重視している関節であることを説明してとにかく開いて見ることになった。
技師は、最初は難渋していたようであったが、さすが10分もしないうちに奇麗に開いて見せた。
実習の初心者では、こうはいかない。
だから難しい局面になると、解剖技師の出番になる。

私はJanse&Illiが報告したイリィ靭帯に注目したのだが、残念ながらはっきりと確認することができなかった。
イリィ靭帯は関節包内にある骨間仙腸靭帯とみられ、Fred.Illi D.C.が発見した靭帯である。
Illiは、その著「The Vertebrall Column」の中で、イリィ靭帯発見の苦労を述べている。
最初はいくら仙腸関節を開いても何も発見することができなかったようだ。
もう研究を打ち切ろうとした時、腸骨の骨膜の下方から調べる方法を思いつき、2回目のチャレンジで、ついにその靭帯を発見したという。
追跡調査を行ったFreemen,Fox & Richrdは、検体の75%にこの靭帯の存在を確認したことを報告している。
関節面に触れると小さな凹凸を持った表面は、ぬるぬるした滑液のような感触があった。

解剖に臨むたびに、常にテーマを持って向かうのだが、それが達成させられたり、次の課題に引き継がれたり、新たなテーマが出来たり、それが解剖実習の堪えられない魅力でもある。
献体の死と向き合いながら、そこから学ぶ側にはまたぞろドラマのようにいろいろなテーマが投げかけられる思いがしてくるのだ。
by m_chiro | 2014-01-11 17:06 | 解剖実習
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