NCA中国に行く。 ②充実した医科大学での解剖実習
②充実した医科大学での解剖実習
②-1. 教授・指導スタッフ 大きな星が海中に落ちたという伝説から「星が浦」と呼ばれた星海公園が、大連医学院から一望できる。大学のキャンパスは、まるでひとつの町を思わせる広大さである。その中に、鉄筋8階建ての校舎が三棟、教務棟、学生会館、図書館、附属病院、教職員宿舎、学生寮、看護婦宿舎棟が何棟も建っている。 私たちは第三校舎の解剖教室の一室を独占することになった。校舎前の花壇には赤と黄色のカンナが咲き乱れている。陽気は夏。雨の少ない土地で、缶詰状態の10日間が始まった。 朝食を済ませ、午前7時には解剖実習が始まる。それから午後6時30分まで、一日10時間の実習に取り組むことになる。指導教授は午前と午後の2チーム編成で徹底したものであった。NCAで使用している教科書「解剖実習の手引き」(南山堂)が事前に大学側で検討され、詳細なスケジュールが準備されていた。 午前の部を担当した孫廷魁教授は日本の慈恵医科大学を卒業した70歳の老師だが、学生時代から大学ラグビーの選手だったらしくなかなかの偉丈夫。その上、エネルギッシュであった。 「頭部の解剖に入る前に、脳と脳神経について少し解説しましょう」と言って始めた講義が、何と延々立ちっぱなしでの1時間40分。日本語での名称を確認するために、一度だけテキストに目を向けた後は質疑応答も交えて立て板に水。迫力のあるその内容に、終わった時には誰からともなく拍手が沸き起こった。 午後の主任教授は孫璽玉教授。日本の大学病院で研修を行った経歴を持っている。温厚、誠実な人柄そのままに授業を進めてくれた。この二人の孫教授を軸に、若手の助教授・徐飛先生と馬堅妹先生がサポートする。徐先生は学究の人という感じで、実習生からの質問にも完全な答えを出そうと努力していた。馬堅妹先生は、助教授というよりも解剖教室に咲く一輪の花といった感じ。たちまち私たちのアイドル的存在となった。 特筆すべきことは「解剖技師」の存在である。技師の制度は中国特有の制度なのだろうか、解剖の「切り出す」作業のスペシャリストである。技師の資格は4ランクの免許制度になっているそうだが、すべて独学での資格試験をめざすのだという。私たちの教室で常にその妙技を見せてくれた馬岩技師の存在が鮮烈な印象として残っている。 彼らはただ切り刻むだけの職人ではない。教授の要望に応じて、神経であれ何であれ正確にそれを取り出して見せる。皮膚の上からその部位を想定する。皮下を何ミリ切ると、どの組織が出る。そこから筋肉をどの程度切ると目的の神経の分枝が出るといった感じで、正確、迅速、華麗なデモ解剖には感服の連続であった。せめてカイロプラクターも、体表からその下に潜む組織や神経、血管などを正確に理解する必要があるのだろう。
by m_chiro
| 2013-12-31 12:33
| 解剖実習
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