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NCA中国に行く。①中国の医学と学問
この記事は、1993年に日本カイロプラクティック・アカデミー(NCA)の学生を引率して行った第一回。大連医科大学での解剖実習授業を記事にしたものです。1994年に、会誌「JS Club」に掲載されました。


NCA 中国に行く。(1994年に「JS CLUB創刊号」*1に掲載した記事)
―人体解剖実習を大連医科大学で実習―

日本カイロプラクティックアカデミー(NCA)が
中国の医科大学・大連医学院と研究の提携を結んだ。
その提携授業として「人体解剖実習」が90時間のカリキュラムで行われ、
9月14日、22名の実習生が中国に渡った。
NCAの解剖学に関する授業は「基礎医学科目」の中に含まれ、
「人体発生学」「人体組織学」「解剖学1-5」の210時間授業と
「人体解剖実習」90時間に分けられている。
今回の学科履修は、その解剖学として
開講されたものである。

NCA中国に行く。
①中国の医学と学問


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NCAと提携した大連医学院は西洋医学の医科大学で、中国三大医科大学のひとつに数えられる名門大学である。医学専門の五年制で、入学するまでには必要な一般教養を習得する必要があるという。現在、320名の学生が学んでいるそうだ。英語、日本語、ロシア語での授業クラスも開講されており、日本語クラスからはすでに三百名ほどの卒業生が日本の大学病院での研修医として来日していると聞いた。

中国という国は新しい国ではあるが、連綿と数えれば四千年の歴史を誇るだけに興味深い国である。最近読んだロバート・テンプル著「中国の科学と文明」(CHINA -LAND OF DISCOVERY AND INVENTION-)には、あらためて中国の学問に対する畏敬の念を感じさせられた。この7著作は、科学史家ジョゼフ・ニーダム博士が1945年から取り組んでいるライフワークの要約版として出版されたものであるが、原本はケンブリッジ大学出版局から15巻刊行され、約20巻が未刊という学術大作である。
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中世と近代の線引きは科学革命にあるとされる。フランシス・ベーコンは、「紙と印刷技術」「火薬」「磁気羅針盤」の三大発明が近代化をもたらしたと明言した。しかし、その発明の起源がすべて中国人の発明によるものだということは知るよしもなかった。ニーダム博士の研究の発端もそこにあり、大変な年月と情熱を費やして、中国の科学と文明を解き明かしたのが前掲の本である。中国がそれほど進歩していたにもかかわらず、近代科学の誕生がなぜヨーロッパにしか起きなかったのか。その謎にも博士の結論が紹介されているが、ぜひご一読されることをお勧めして、ここではふれないでおく。

中国の医学史上の発見にも驚嘆する。血液循環の発見は。1962年にハーヴェイが公表したというのが通説だが、中国ではそれより約二千年も前に血液循環の原理が確立されていたという。長い間、血液の循環は中国医学全体の基盤になる原理となったようだ。そう言えば、今回の実習でも循環器系にはかなりのウエィトを置いてくれたのが印象に残っている。

今日では一般的認識となった24時間体調周期リズム「生物時計」の概念も、中国ではBC2世紀にすでに医学書に著している。同じ頃、人間の尿から性ホルモンと脳下垂体ホルモンを分離し治療に使っている。ちなみにヨーロッパでは、妊婦の尿にステロイド性ホルモンの含有を発見し、またその他のホルモンを尿から抽出するようになったのは、やっと20世紀初頭のことであった。天然痘の予防接種でもAD10世紀には、人痘接種の秘術が使われている。この画期的方法がヨーロッパに広がり、18世紀にジェンナーの牛痘接種法で完結するが、中国では現代の免疫学を構築していくきっかけ作っている。こうした世界に恩恵をもたらした中国の科学文明の数々を知るにつけ、中国という国の深遠なる学問への認識を新たにさせられる思いがする。

解剖実習期間中に見た数々の人体標本の見事さも絶句ものであった。しかし中国の知恵を知れば、そのスライスの奇麗さ、保存の完璧さ、教材としての価値、どれもこれもうなずけてくる。
by m_chiro | 2013-12-30 12:40 | 解剖実習
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