痛みの質…、それで何が分かるのか
「痛みの評価」が第5の必須バイタルサインに挙げられたのは2001年(アメリカ)のこと。ベッドサイドでは、基本的に5項目のチェックを1~2分で行うことが勧められている。

その5項目とは….、
1.増悪因子と寛解因子
2.性質
3.部位
4.強度
5.時間特性


で、これらを要領よく聴き出すようにしなさい、というわけだ。

痛みが増悪する因子、それが楽になる因子はあるか。
この情報は治療する上で重要な鍵になるから、聞き逃せない。

どの部位が痛むのかを知ることも重要だが、それが必ずしも障害(問題)とされる部位とは限らないことが多い。だから、ややこしい。

痛みの強度や時間特性については、各疾患の徴候と照らし合わせて判断する必要があるが、さて痛みの性質とは何だろう。

例えば、急性の痛みを訴える患者さんがみえたら、その痛みが体性痛であるのか、関連痛であるのか、あるいは内臓痛であるのか、この3者を区別しなければならない。

どうやって?

それは患者さんの訴える痛みの性質を聴きだすことで、ある程度の目安がつく。
後は触診である。
急性痛の多くは筋・筋膜に起源がある。
ところで内臓痛と体性痛では、その起源となる筋肉が違う。
内臓の筋肉は不随筋である平滑筋だ。
血管も平滑筋である。

一方、骨格筋は横紋筋である。そして、内臓でも心筋は横紋筋である。
だから平滑筋が過収縮を起こすと、「じんわりと締め付けられるような痛み」が起こるとされている。
それが更に悪化した攣縮状態が起こる。そうなると強度の持続的疼痛になる。
この痛みは疝痛とされ、内臓における平滑筋の攣縮による痛みである。
だから心臓疾患でも「締め付けられるような痛み」は、血管(平滑筋)由来の痛みである。

横紋筋由来の痛みは「重苦しい鈍痛」である。
これも筋の攣縮が起こると筋の痙攣性の痛みになる。

内臓痛であれ、疝痛・体性痛であれ、特徴的に「圧痛」があり、疝痛や体性痛には「筋性防御」がみられることがある。
ところが軽度の内臓痛では筋性防御は起こらない。

筋性防御とは、組織を押さえた時に筋収縮が増強して、それ以上の侵入を防ごうとする反応である。
筋性防御が起こるのは疝痛や体性痛に限られるようだ。
だから、筋性防御反応が起こる痛みであれば体性痛であり、あるいは内臓痛であれば「疝痛」に於いてということになる。

もうひとつ「反跳痛」という身体反応がある。
圧迫して行って、急に手を離したときに起こる痛みのことで、増悪した体性痛にみられる身体反応である。
肋間神経や腰神経を介して腹壁筋の緊張が反射的に亢進するのだ。

こうしてみていくと、平滑筋と横紋筋の神経支配の違いも影響しているのだろうと思えてくる。
平滑筋は、管状あるいは袋状の形態を造る内臓器官の壁を構成していて、支配神経は自律神経である。
横紋筋には神経-筋接合部があるが、平滑筋では違う形態になっている。
それはギャップ結合と言われる信号の伝達機構になっていて、消化管ではこの収縮作用を利用して消化物を運搬しているのだ。

ギャップ結合の形態をウィキペディアより引用しておこう。
c0113928_1632244.png

このギャップ結合を有する平滑筋は単元性平滑筋で、グループ化された組成である。
つまりユニットになっている。
グループ内の信号伝達は同時に行われ、神経支配も交感神経と副交感神経の二重支配を受けている。
一方、瞳孔括約筋のような平滑筋は多元性平滑筋でギャップ結合のようなユニット構成ではなく、神経支配も交感神経あるいは副交感神経のいずれかひとつの支配を受けているとされる。

c0113928_16333060.png

上の図はよく知られる骨格筋の神経-筋接合部のイラストである。
①の神経終末が②の筋組織の膜に接合し、③のアセチルコリン小胞から④のアセチルコリン受容体に伝達され、⑤のミトコンドリアがATPのエネルギ物質を産出するメカニズムが描かれている。

内臓痛か、体性痛か、これを鑑別できたら、優先すべきは内臓痛で専門医への紹介を視野に入れておかねばならない。
内臓痛を除外出来たら、後は体性痛である。
発痛部位がどこから誘発されているか、その見極めが治療家には重要な見立ての能力になるのだろう。
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by m_chiro | 2013-12-02 16:35 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
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