頭痛を見分けるために
今年は台風が続発である。26号は伊豆大島や関東の太平洋岸に甚大な災害をもたらした。
気象庁から警告が発せられていたものの、未曽有の土石流で街も人も飲み込まれる大参事になった。追いかけるように大型の27号が後に続いているらしい。

警戒感はあっても、未然に防ぐことは難しいこともある。同様に、重篤な障害を秘めた患者さんが、大事に至らないように病的サインを見逃さないことも念頭から外せない。
それは我々にとっても施術の心得である。

台風も北上するにつれ、崩れて低気圧が起こる。すると頭痛を訴える患者さんが多くなる。
これは天気痛とされる痛みだ。自律神経が関与するので治療の参考になる。

というわけで、頭痛には重篤な疾患が隠れていることがあり、特に注意が必要だ。

まず頭痛の患者さんには、その痛みが外傷性か否かを確認しなければならない。
外傷性であれば相当の対応をすることになるが、非外傷性であれば更に鑑別が必要になる。
要するに、一次性であるか、二次性の頭痛であるかを分けることである。

一次性とは機能性頭痛のことで、原因も近年まで明確ではなかった。
そして基本的に3つに分けられてきた。
1.片頭痛、2.緊張性頭痛、3.群発頭痛である。
それぞれに特徴的な兆候がある。

片頭痛は読んで字のごとく、片側性が6~7割の高率で一側性にでる。
残りの3~4割は両側性とされている。
緊張性頭痛は両側性に発症するので、もしも両側性の片頭痛であれば、緊張性頭痛との鑑別は他の徴候から分けなければならない。

それは、こんな徴候の違いで分けられている。
拍動する痛みは片頭痛で随伴症状(吐き気、嘔吐、光に過敏になる羞明、閃輝暗点などの前駆症状)があるが、緊張性頭痛には随伴症状はなく圧迫されるような締めつけられる痛みとされる。
誘因も異なる。
片頭痛はアルコールや赤ワイン、チョコレートなどの嗜好にかかわるが、緊張性頭痛は心理的ストレスが引き金になる。

ところが、この片頭痛と緊張性頭痛は「症状は異なるが原因は同じ」(1973、Waters)、とする説が認められるようになった。
その原因は「セロトニン」にあるとする説である。
だから、セロトニン受容体に選択的に作用させるトリプタン系の薬は、「夢の鎮痛薬」と呼ばれている。

群発頭痛は、必ず片側性で眼やこめかみ周辺に激痛を伴って発症する。
随伴症状には、同側の結膜充血、涙や鼻水、発汗を伴い、たばこ、アルコールの誘因物質がある。
こうした一次性の機能的頭痛には、徒手療法が効果的に反応することが多い。

さて、問題は二次性頭痛である。
これは器質の病態が関わって起こる頭痛である。
しかも重篤な問題があれば見逃せない。これも3つに分けられる。
1.頭蓋内病変、2.顔面頭蓋(頭蓋外)病変、3.全身性疾患の3つである。

全身性疾患では熱を伴うインフルエンザなどの疾患、アルコールなどの薬物によるものなどで、顔面頭蓋病変としては帯状疱疹や副鼻腔炎、顎関節症(MPSも含めて)、緑内障などがあるが、頭蓋内病変と同様に見逃せない疾患は側頭動脈炎で、失明の恐れがあると言われている。

さて、問題は頭蓋内病変であるが、これを鑑別する能力を我々は持たない。
特に重要視される疾患は、脳血管疾患、脳内感染症、脳腫瘍で命に係わる。
したがって病的サインを見つけたら、一刻の猶予もせずに専門医に紹介しなければならない。
その病的サインとは、意識障害や落下発作、項部硬直、発語障害、脳圧亢進徴候(クッシング徴候:血圧上昇と相対的除脈が起こる)、などが見られることである。こうした徴候は、我々のように診断能力を持たない治療家の臨床でも確認出るケースがあるので、こんな徴候の患者さんは専門医に紹介しなければならない。

それでも重度の片頭痛とクモ膜下出血による頭痛の鑑別は、臨床的にとても難しいとされる。この鑑別に関する新ルールがAMAのジャーナルに掲載された。
CareNetからの情報である。
「救急部門での急性頭痛、クモ膜下出血除外の新ルール」

この記事によると、クモ膜下出血に関する決定基準として(ルール1)、1.40歳以上、2.首の痛みや硬直、3.目撃者のいる意識消失、4.労作時の発症、この4項目を採用すると、クモ膜下出血に関する感度は98.5%、特異度27.5%だそうである。そこにオタワSAH基準である1.雷鳴頭痛(発症後、即座に痛みがピークに達する頭痛)、2.診察時の頸部屈曲制限、の2項目を加えると感度100%、特異度15.3%になるという鑑別診断ルールである。
感度が上昇すれば、腰椎穿刺などを省いて画像にいくことで、診断ステップを早めることにもなるだろう。
やはり、問診や身体所見を取ることは不可欠で重要な作業なのだ、と再確認させられる。
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by m_chiro | 2013-10-19 10:26 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
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