「痛み学」NOTE 60. 炎症徴候が慢性的に続く訳?①
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。


60. 炎症徴候が慢性的に続く訳?
① ある慢性炎症徴候の症例


これまでみてきたように身体組織に有害な刺激が加わると、まずは警告信号としての痛みが起こり、損傷組織の除去や修復が促される。
この時期の生理反応が炎症で、4徴候(1.疼痛、2.発赤、3.熱感、4.腫脹)が伴う。
この生理反応の機序に関するキーワードは血管反応に起因するもので、血管が拡張し、血流が増加し、血管透過性が亢進することに集約されている。
そして結果的に運動・機能障害が随伴する。

こうした炎症症候は、受傷から10日ほどでその役割を終えるのが一般的な経過とされている。にもかかわらず、慢性的に炎症が続くケースが少なからずある。
とても厄介な病態が作られるわけであるが、そこに介在する機序はやや趣が変わっているようだ。

c0113928_12452841.jpgそこで、最近施療した患者さんの症例から、その慢性炎症の機序を考えてみることにしたい。
ここに紹介する患者さんは中年の婦人である。
かれこれ2年近くも、左足首の炎症徴候に悩まされて来た。
右足首が大きく腫れあがり、距骨も内側に転位していて(外返し)、特に内果周辺の腫脹が顕著である。
発赤と熱感を伴い、ジャンプ徴候の痛みがある。その結果、正常歩行ができず跛行している。運動・機能障害が随伴している慢性的な炎症徴候の患者さんである。

ついに彼女は職を辞す破目になるのだが、職場から解放されても下腿筋群に有痛性痙攣(こむら返り)が頻繁に起き、夜間痛もあり、睡眠も妨げられていた。
結局、退職して足首への過重負荷を軽減させる狙いは、何の解決にもならなかったわけである。

彼女は決して治療を怠ってきたわけではない。
むしろ積極的にいろんな治療を試したあげく、大学病院の整形外科を受診している。
診断は「偏平足」だった。特注の足底板を作ってもらい対応したが、それでも一向に腫れも痛みも終息しなかった。

この症例で、私が注目したことは「有痛性痙攣」が頻発していることだった。
そこで、その筋・筋膜に対応した。
加えて、姿勢制御系におけるリ・プログラミングを行った上で、貯留した足首の腫脹には伸縮性テーピングを用いて補助的にパンピングを促した。

手短に言えばそれだけであったが、その結果は劇的なものだった。
治療1週間後の再診時には腫脹が3分の1に縮小し、歩行や随伴症状も良好になったのである。
この長く続いた炎症徴候の終息に、いったい何がどのように作用したのだろう。
慢性の炎症徴候を考える素材としてみたい。
[PR]
by m_chiro | 2013-05-07 12:45 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://mchiro.exblog.jp/tb/20031917
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
<< 「痛み学」NOTE 61. 炎... ゴールデンウイークの花盛り >>



守屋カイロプラクティック・オフィスのブログです
外部リンク
カテゴリ
以前の記事
お気に入りブログ
最新のコメント
最新のトラックバック
ほとんどがMPSなんだけ..
from 心療整形外科
月経が再開した
from 心療整形外科
TPは痛みの現場ですらな..
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
脊椎麻酔後頭痛について
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
起立性頭痛
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
「5%の中に本当の椎間板..
from 心療整形外科
髄液循環系と揺らしメモ
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
医師はユニコーン(架空の..
from 心療整形外科
末梢神経の周膜と上膜にも..
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
また勉強になりました。
from 漢のブログ
ライフログ
検索
タグ