危うく「寝違い」にするところだった
老婦人が、ご主人に伴われて治療にみえた。
昨日の朝起きてから首が回らなくなったのだそうだ。 痛くて、痛くて、こんな辛いことはない!….、と訴える。 「朝起きて痛みを感じたのだったら、寝違いでもしたのかもしれませんね」 「寝違いじゃないと思うんだけど…..」 「何で寝違いじゃないと思うの?」 「朝起きた時は大丈夫だったんです。けど、朝ごはんを食べた後から痛み出して首を回せなくなったんです」。 (摂食と関係あるのかな...) それで、病院の整形外科に行ったそうだが、X-rayで問題がないと言われて終わりだった。 でも辛いので、降圧剤の処方を受けている内科医院で診察を受けることにした。 冬期間の4か月ほどで体重が5㎏減り、最高血圧が170㎎だった。 医師は、胃カメラ、血液検査などの精査を指示し、別の病院に紹介された。 結果は、一週間後に判明する。 頸部の可動域をみると、右回旋に痛みによる制限がある。 発痛部位は、右胸鎖乳突筋の3分の1ほど上部の領域にある。 左回旋は動きやすいが、それでも右の同じ部位が痛む。 仰臥位は長くはできない、寝て起きる動作が大変だと言う。 歩行で腰部も痛むが、それよりも首の痛みの方が強くて歩くのもしんどい。 座位が最も楽な姿勢のようである。 鎖骨の胸骨端や上部肋骨も固着している。 座位のまま、間接的手法で筋スパズムのリリースを試みた。 筋が半分ほど弛んだ頃に、患者さんが大きく深呼吸をした。 「大丈夫ですか?」 「大丈夫です。なんか空気が抜けたようにゆっくりしました…」 頭部を支えるために前頭部に手を添えたら….「あれっ!、熱があるんじゃない…」。 「熱はないですヨ」 「測ってみたの?」 「いいえ、風邪もひいたこともないし、熱が出たことがないから….」 「ちょっと熱を測らせてもらえるかな….」 37.8度だ。夕方にかけてもっと上がるかもしれない。 「首が痛むだけでなくて、身体全体が痛だるくて、シンドイんじゃないの?」 「ええ…、辛いです」 風邪症状はなかったそうだ。 風邪やインフルエンザもそうだが、全身疾患や感染症などの熱に伴う筋肉痛がある。 細菌やウイルスを取り込んだマクロファージは、インターロイキンという内因性発熱物質を出す。 このインターロイキンは、筋肉にも運ばれてプロスタグランジンE2がつくられる。 プロスタグランジンE2は酵素(リリソーム)を細胞外に遊離して、筋肉のタンパク質を分解するために筋痛が起こるのである。 発熱によって痛みが起こる仕組みであるが、さて、この患者さんの問題は熱の原因にある。 内科医院で再診を勧めたのであるが、危うく「寝違い」にするところであった。
by m_chiro
| 2013-04-24 07:49
| 症例
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