「キャパの十字架」沢木耕太郎著
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沢木耕太郎著「キャパの十字架」を読んだ。

一枚の写真から推論をし、仮説を立て、検証していく、その緻密なプロセスがとても参考になった。
また、極上の推理小説でも読んでいるように面白かった。




一枚の写真とは、「LIFE」誌に掲載された有名な写真「崩れ落ちる兵士」である。
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1936年のスペイン内戦で、共和国軍兵士が反乱軍の銃弾を受けて倒れるところを撮ったとされる写真だ。
戦場カメラマン・キャパの名前を一躍有名にした写真である。

いろんな雑誌に何度となく登場した写真であるが、これほど物議をかもした写真もめずらしい。

場所は銃弾が飛び交う戦場とされる。
カメラマンの命でさえ危うい状況の中で、今まさに銃弾を受けて崩れ落ちる瞬間を捉えることなどできるものだろうか。
そんな思惑が錯綜して、写真の真贋論争が沸き起こるのである。
いろんな論客が推論し、物理学者まで巻き込んで世界を騒がせた。
が、キャパ自身は口を閉ざした。

やがて、この論争に決着がついたと思わせる告白が発表される。
「崩れ落ちる兵士」の家族が名乗り出るのだ。
しかも戦死の状況も詳しく述べられた。一兵士の戦死の状況が事細かに、写真を解説するように報告されたのか。
これが逆に怪しいということになり、写真の真贋論争は終息しなかった。

「崩れ落ちる兵士」は本当に撃たれたのか。

キャパの写真集などを翻訳もしたノンフィクション作家・沢木耕太郎氏が、長年の疑問に決着を付けるべく取り組んだ意欲作である。

現地を取材し、キャパのあらゆる写真に目を通し、これまでの真贋論争の論説をあたり、一枚の写真から「崩れ落ちる兵士」の正確な場所、銃弾の物理作用と標的の崩れ方、人物の特定、カメラの特定、写真の撮られた角度、季節から雲の動きなどなど。
一瞬を切り裂いた一枚の写真とその状況が推論され、検証されていく。

写真の真贋論争からはじまった謎は謎を呼び、糸は幾重にも錯綜し、ついには思わぬ結論に辿り着く。
それだけではない。書名にあるキャパが背負った「十字架」とは何を意味しているのか。
キャパ自身の実像に迫りながら、この天才的な写真家の生き様までもが推論されている。
何よりも、著者の推論と検証の手法に関心させられた。
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by m_chiro | 2013-04-16 17:55 | Books | Trackback | Comments(0)
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