「どっちの脚が短いですか?」
「どっちの脚が短いですか?」。
脚の長さを気にする患者さんがいる。
そう聞いてくる患者さんは、カイロや整体などの徒手療法を経験している人のようだ。
それだけ徒手療法では、「脚長差症候群」という概念を重視しているのだろう。
きっと両脚の長さが揃ったことを、治療の成果として説明しているのかもしれないし、体調不良の目安にでもしているのかもしれない。

しかし、よくよく考えれば、これほど怪しい話はない。
非対称性は自然界の常であり、ヒトの身体とて左右対称ではありえないからだ。
例えば心臓や肝臓、胃の位置も正中にあるわけではないし、腎臓も左右の位置関係は違う。
数ミリ単位の脚長差なんて、あって当たり前である。

特に、カイロプラクティックでは脚長差を検査項目に入れているメソッドもある。
しかし、それはあくまでも検査手技であって、脚長差を無くすための方法論としてあるのではない。
あくまでも刺激に対する興奮と抑制の神経シナプスの反応を見るためのものである。
だから治療の結果として、脚の長さが揃ったかどうかなんて関係ない。
繰り返すが、脚長差の検査は身体の動きや刺激に対する反射的な振る舞いを見ることに意義があるのだ。
そこから、身体における機能的な状態を推測できるし、効果的な刺激が入力されたかの確認にもなる。

ところが、どこで勘違いしたのか、脚長差を無くすことが治療の目的になってしまった。
脚長差を気にする患者さんが多いのも、そんな誤解が少なからずあるのだろう。
そこでは「解剖学的短下肢」が、いつの間にか「生理学的短下肢」にすり替わっている。

「生理的短下肢という客観性のないあいまいな用語はさけるべき」、と提言をしている論文もある。
その論文の記載によると、解剖学的短下肢は次のように定義されている。
「短下肢とは、一方の下肢が他方と比べ、大腿骨頭重力負荷表面から床までの長さが、実際上短いことを意味する。(Bayley & Beckwith,1937)」

要するに、体重負荷、重力負荷による大腿骨頭表面から床までの長さのことである。
だから大腿骨や脛骨の長さが同じでも、解剖学的脚長差は存在することになる。
J.F.Winterstein,DC.の論文「脚長差症候群について」(日本カイロプラクティック学会雑誌Vol3,No2)によれば、150人のX-ray撮影の結果では93%に1㎜以上の脚長差が認められている
左右差に有意な差はない。
脚長差のない人の方が稀だということである。
この構図は、椎間板ヘルニアと痛みの関係の主張にどこか似ている。

一方、生理的短下肢は下肢長を測定しているものではない。
仰臥位あるいは腹臥位で、患者の踵あるいは内踝の位置的な比較をしているだけのことである。
それが治療の結果として揃ったことに何ほどの意味はない。
だから、生理的短下肢を揃えるための治療行為なんて、健康妄想の都市伝説という他ないのである。
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by m_chiro | 2013-04-15 09:05 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(0)
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