「カイロプラクティック・コンセプト」ひとり語り(1)
「カイロプラクティック・コンセプト」ひとり語り
1. ことのはじまり


2012年2月、衝撃的な事件が起こった。これを事件と呼ぶべきかどうかは人それぞれだろうが、少なくとも私にとっては重大なひとつの事件だった。
かれこれ30年以上もカイロプラクティックとかかわってきて、こんなに驚いたこともなかったように思う。

この事件を知ったのは、科学新聞社が発行する「カイロ・ジャーナル」紙「論壇」のコラム記事だった。「CCE 哲学教育丸投げ、サブラクセーションも無視」というタイトルが付けられていて、こんな書き出しではじまっていた。
著者は櫻井京D.C.2)である。
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「サブラクセーションという言葉が米国カイロプラクティック教育審議会(CCE)基準から消えたことは、世界のカイロプラクターに衝撃を与えたが、世界に4つあるCCEの基準を見てみると、実にびっくりするような状況になっている」1)。

それ以前からアメリカのカイロ界における不穏な動向は、小さくではあるが報じられていたので、まったく寝耳に水の話ではなかったのだ。
にもかかわらず驚かされたのは、あまりにも想定外のことだったから、と言う他ない。
カイロプラクティックの本場である米国のカイロ教育審議会(CCE)が、よもやあのような決断を下すとは夢にも思わなかったのである。
どんなに激論が続けられようと、カイロプラクティックの基本的な考え方を捨て去ることなんてできないはずだ、と見くびっていた。
ところが事態は急転した。
これまでのカイロの教育基準に、CCEは見切りをつけたのである。

カイロプラクティックの基本的な概念を象徴するキーワードをあげるとすれば、少なくとも3つの言葉に集約できるだろう。
ひとつはカイロプラクティック哲学の用語である。「イネイト・インテリジャンス」、「ユニバーサル・インテリジャンス」として語られている。
二つ目は、「サブラクセーション」というカイロプラクティックの専門用語であり、三つ目はカイロプラクティックのアプローチを表現した「アジャストメント」という技術用語である。
このカイロプラクティックの用語とも言えるキーワードが、カイロプラクティックの教育基準から外されたのである。

この流れは米国CCEだけに留まらない。
むしろ最後の砦ともいえる米国CCEも陥落したのだ。
この事態は、カイロプラクティックの歴史的な転換期を迎えたことを象徴しているようにみえる。

ところが不思議なことに、このCCE基準は必ずしも教育の現場(大学)あるいは研究の現場に適応させるものではないらしい。
CCEの役割は「教育の必須要件を規定」するのであって、「教育や研究を制限するものではない」ということのようだ。

要するにCCEは「教育の自由と規律性を重視」するがゆえに、「特定の哲学、原理、臨床を定義、支持しない」というのである。
煙に巻いたような説明だが、カイロプラクティックの概念を「特定」のものと位置づけたところがミソのようだ。

何に対して「特定」なのか。それは、いわゆる医学教育に対峙する内容ということなのだろう。
だからこそ、医学教育としてコンセンサスが得られない特定の概念は、カイロ教育の基準から除外しなければならない。
カイロ哲学も、サブラクセーションも、今日の医学・医療の概念としては受け入れないのである。
そう読める。

ところが見方によっては、本音と建て前は違いますよ、と言っているようにも聞こえる。
どうも政治的な配慮の匂いがしないでもない。

いったい、カイロプラクティックはどこに向かおうとしているのだろう。

ところで、私などは自称カイロプラクターであるがゆえにこそ、せめて自分自身の中に「カイロプラクティックとは何か」ということに整合性のある解釈を構築しておかなければ、カイロプラクティックの治療家として前に進めない気がするのだ。

「特定」の概念で「特定」の臨床に携わっている以上、自分で「特定」に決着をつけるしかない。
ここは今一度、D.D.パーマーの原点に回帰しながら再考してみようと思い立った。
カイロプラクティックとは何か、
そしてその原理とはどのようなものなのか。
それを探ってみることにした。

とは言っても、あくまでも自称カイロプラクターの「ひとり語り」に過ぎない。
それでも、このハードルを乗り越えずに、カイロプラクティックを名乗ることはできないと思うからである。


1)「カイロ・ジャーナル」第74号、2012.6.26、科学新聞社刊
2) カナディアン・メモリアル・カイロ大学卒(D.C.)、「ポジショナル・リリース・セラピー」、「統合的徒手療法」(科学新聞社刊)などの訳書がある。
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by m_chiro | 2013-03-12 09:19 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(0)
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