「痛み学」NOTE 59. 炎症・腫脹にみる合目的活動のダイナミクス③
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。 炎症・腫脹にみる合目的活動のダイナミクス③ ③組織修復のダイナミクス 白血球の向かう先は損傷部位であるが、この走行もケモカインが誘導する。 拡散された組織中のケモカインには濃度があり、白血球は濃度の低い方から高い方へと走行し、炎症局所に誘導される。この走行は、濃度勾配に逆らった走行性である。 白血球には好中球(多核)、マクロファージ(単球)、リンパ球などがある。 好中球は「小食細胞」とも呼ばれている多核の細胞で、比較的小さな異物・壊死物に対する食作用を行う。 損傷の比較的早期に、好中球の浸潤が多くみられる。 また、マクロファージは単球であり、比較的大きな異物・壊死物の食作用にかかわる。 そのために「大食細胞」とも呼ばれ、損傷の後期に活躍する。 初期に好中球が前線部隊として出動し、戦後の守りにマクロファージが活躍するという図式だろうか。そしてリンパ球は、免疫機能に関わる抗原情報を提示する役目を担っている。 こうして炎症の現場では、実に戦略的でダイナミックな活動が繰り広げられているのである。 侵害刺激に反応して、DRGではサブスタンスPやCGRPといった神経ペプチドがつくられるが、これらは末梢の受容器(ポリモーダル受容器)に神経と液性の信号伝達のメッセンジャーとして待機するわけだ。しかも持続的に。 熊澤孝朗先生の下の作図は、この神経ペプチドの広範な修復活動の作用を示している。 ポリモーダル受容器は、痛覚系を過剰に興奮させる役割を担うところであり、また修復・鎮痛のポイントでもある。 炎症や腫脹、痛みにプロスタグランジンが注目されているが、そうした認識を改める必要がありそうだ。 プロスタグランジンなどはポリモーダル受容器を直接興奮させる作用を持たなからで、組織の現場では低濃度のブラジキニンでもポリモーダル受容器を興奮させるとされている。 炎症・腫脹・痛みにかかわる組織内でのダイナミックな活動は、実に複合的で合目的である。
by m_chiro
| 2013-02-15 12:19
| 痛み学NOTE
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