「機能障害」とて結果にすぎない
損傷と炎症は、組織損傷後に急性炎症が起こり、そこから修復とリモデリングが後に続くプロセスを辿る。
だから損傷部位を徒(いたずら)に刺激さえしなければ、痛みは急性炎症が治まることで消失するものなのだ。
自己免疫異常でもない限り、通常は損傷後の7~10日ほどで終息するとされている。

ところが臨床の現場では、痛みや炎症期が長引いているケースに出くわすことも少なくない。急性期に適切な対応がなされたにもかかわらず、痛みが長く続くと、なぜ慢性的な経過を辿るのだろうと、治療家はその理由を探すことに苦しめられるのである。

慢性痛は、今では損傷の現場を離れて中枢神経系に原因があるとする認識が広まっている。だとすると、それは神経系の可塑性によってもたらされる神経学的病変あるいは神経障害性の痛みということになる。とても厄介な痛みである。

だが、そう決めつけてしまうには、あまりにも根拠が乏しい。
だから、中枢神経の可塑性説に無条件に同意するのも躊躇する。
きっと広義の慢性痛には、末梢組織の機能的・内部環境的素因が解消しきれていない病態がありそうだ。
それも、少なからずありそうに思えるし、痛みには様々な病態が混在しているケースもあるだろう。

が、多くの患者さんは「非特異的」というレッテルを貼られ、「ストレス原因説」が診療ガイドラインに取り上げられるようなった。でも、これさえ危ぶむ。

なぜなら、決して説得力のある根拠が提示されているとは言えないし、このことで実際に存在する慢性的な末梢性の侵害と炎症を軽視するように仕向けることになりかねないからである。

慢性痛の患者さんは、決して詐病しているわけではないはずである。
だからこそ徒手治療における臨床上の検査を適切に行うことで大切である。
問題点が浮き彫りになることが多々あるからだ。

こうして得た結果を、治療家は「機能的障害」と表現するが、これとて適切な用語とは言えないだろう。
身体に表現された機械的・力学的変化は、神経系によって統合された結果である。
そして、運動は中枢神経系の入出力情報によって協調されたパフォーマンスにほかならないからである。
運動機能障害ですら、単に関節や筋の健全さに依存しているわけではない。
その前提には、運動プログラムや運動学習の神経学的統合が不可欠なのだ。

したがって、
「機能障害」を結果とみなして、その先にある情報源を探る診立てが求められなければならないのだろう。
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by m_chiro | 2013-01-26 09:40 | 痛み考 | Trackback | Comments(2)
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Commented at 2013-01-26 21:01
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by m_chiro at 2013-01-30 09:41
鍵コメ様、痛みはとても複合的な要因がからんでいるように思えますね。
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