MPSの罠はどこにでもある②
② 何もしていなかろうが、MPSの罠は仕掛けられている

MPSとは「筋・筋膜性疼痛症候群」のことである。筋・筋膜に由来する痛みに伴って、様々な症状が現れるという症候群だ。
この腰痛患者さんは、正月になって休養を決め込んでいたのに腰痛になった。
さては何か悪い病気に取り付かれたか、と不安になったのだろう。

「何もしていないと言うけど、じゃぁ、一日をどのようにして過ごしてるの?」
「正座してます。私には正座がとても楽な姿勢なんです」

「正座して何をしてるの?」
「何もしてません」

「何もしてないと言ったって、仮に正座して瞑想していても、瞑想をしていたことになるけど…」
「あ~、テレビを見ています」

「あっそう! コタツに入って正座してテレビを見ているわけだ。それじゃ、きっと御宅のテレビは正座しているあなたの左側にあって、正座が辛くなると右を下にして手枕で横になるんだね」
「そうです。なんでわかるんですか?」

この推論は難しい話ではない。
体幹の左側の筋群に一側性の緊張があるからである。
頭部を左に向けて左を見ると、左の傍脊柱筋と後頭下筋群は興奮して緊張するし、反対側の相同筋群は抑制されることになる。頭部や体幹の位置に対する眼球運動の代償性については、1978年頃の研究から明らかになったとされている。

左胸腰移行部の過緊張と固着は、右側臥姿位における圧縮部位によるものだろう。
右肩甲骨が外旋していることも、習慣姿位のあることが推測できる。

足踏み運動や歩行から動きのパターンを観ても、左胸腰移行部の固着ポイントが支点になって動きが作られていることが見て取れる。

結局、彼女は何もしていないのではなく、正座で上体を左回旋位で長時間の持続的な体幹回旋位による筋活動を強いていたことになる。
この姿位をそのまま横にすると右側臥位になる。
身体の上下軸は左回旋位で固定され、眼位もテレビの方向に固定され、動いているのはテレビの画面だけである。

この身体への入力情報は左の小脳を刺激することになり、右の小脳は抑制的に働くことになる。こうして左右の運動誤差が生まれ、筋緊張の程度が相対的になる。
そして筋・筋膜の受容器閾値が低下する部位が生じ、日常的に普通に行っていた刺激が侵害刺激として感知されることにもなる。
だから、これも動作痛のひとつに挙げてもいい。

これをこじらせると厄介になる。だからMPSは侮れない!

活動レベルの低下は、過活動と同じ痛みのリスクを内包している。
下図は、腰痛で安静にするよりも通常の活動性を取り戻すことが大切だ、と言われる根拠として提示されている。
MPSを発症させる罠は、活動の過不足には関係ないのだ。
「ゼロか、100%か①」
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by m_chiro | 2013-01-18 14:05 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
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