「脳化」と「身体性」、その関係性のバランス
「わたしの本棚」 ①「唯脳論」(養老猛司著)
「脳化」と「身体性」、その関係性のバランス


先日、地方新聞の新聞内新聞のコラム「わたしの本棚」シリーズの取材を受けた。
このコラムは担当した者が、次の予定者を指名してリレーする趣向で連載されている。

最近読んだ本で面白かった本を選ぶのかと思っていたら、これまで読んだ本の中から3冊選んで紹介してほしい、ということだった。

しかも、その本にまつわる思い出、あるいは人生に影響されたこと、などなどと付帯条件がつけられている。やれやれ、面倒な話だ。

これまで読んだ本から3冊選ぶというのは、結構むずかしい。
あらためて過去に読んだ本を時系列で思い起こしてみると、私の読書傾向は偏っているようだ。

カイロプラクティックに携わるようになってからは、専門書や自然科学、医科学あるいは生き物に関する本が多くを占めている。が、文芸書では面白い本に出会うと、その作家の本をほとんど読み尽くす。
だから読んだ本の数の割には、作家の人数はそれほど多くはない。

c0113928_12382269.jpgそれでも敢えて選ぶとすれば、第一に「唯脳論」(養老猛司著、1989)をあげたい。
「唯脳論」は、私にとってバイブル的な本でもある。
何しろモノの見方や考え方を変えさせられた。

「唯脳論」の内容を端的に言えば、今の時代はすべてが「情報の優位性」で解釈できる。そのことを養老先生は「脳化」と表現していて、あらゆる事象から脳化現象を読み解いている本だ。煎じ詰めれば、「脳の中に生きている」社会を詳らかにしている。
脳化された社会に生きているということは、逆に見れば「身体性」を喪失することでもある。

「唯脳論」での問いかけは、「形態」と「機能」、「物」と「心」、「見えるもの」と「見えないもの」といった二元論か、あるいは一元論かの問いかけではなく、「身体性(物)」と「脳化(情報系)」の新たな関係性が求められていることでもあるだろう。

私は、「脳化」と「身体」の関係性を「均衡」と理解した。
「情報」の優位性が高まれば、シーソーゲームのように「身体性」は低下する。

ところが人間は、体調が悪くなり身体は休むことを要求しているにもかかわらず、約束や予定を優先する。
つまりは脳の情報を優先して、身体はその情報によって制御されている。
こうして「身体性」は失われていくのだろう。

この本と出合ってから、身体を観ること、治療をすることの意義と方法論がガラリと変わった。と言うより、変えさせられた本である。
脳を抜きにして、つまり神経系(情報系)を抜きにして身体を語れない、そう思った。

「唯脳論」は、1989に刊行された本である。脳ブームが起こる前の頃である。
「唯脳論」を読んで感動し、養老先生に業界での講演を依頼するために鎌倉のご自宅を訪問したことがある。

その講演が実現し、講演録を文章に起こした。
了解を得て、そのタイトルを「脳医学との交差点」と変更し、「リ・ボーン 等身大のカイロプラクティック」(1991)というムック版の本に掲載したのである。
「脳化」と「身体」の関係性は、カイロプラクティックの重要なコンセプトのひとつだと確信したからであった。

c0113928_17454075.jpg


このことは「唯脳論」という本にまつわる大切な思い出である。
だからこそ、私にとっては今でもバイブル的な本なのである。
[PR]
by m_chiro | 2012-12-17 18:02 | Books | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://mchiro.exblog.jp/tb/19014083
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
<< 2次情報に惑わされるな。1次情... 今年は「バック・ハガー」(江崎... >>



守屋カイロプラクティック・オフィスのブログです
外部リンク
カテゴリ
以前の記事
お気に入りブログ
最新のコメント
最新のトラックバック
ほとんどがMPSなんだけ..
from 心療整形外科
月経が再開した
from 心療整形外科
TPは痛みの現場ですらな..
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
脊椎麻酔後頭痛について
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
起立性頭痛
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
「5%の中に本当の椎間板..
from 心療整形外科
髄液循環系と揺らしメモ
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
医師はユニコーン(架空の..
from 心療整形外科
末梢神経の周膜と上膜にも..
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
また勉強になりました。
from 漢のブログ
ライフログ
検索