「痛み学」NOTE 56. 痛みは決して力学的ではない②
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

痛みは決して力学的ではない
② 血管の損傷では、どんな生化学的舞台ができるか


血管の損傷には出血が伴うので止血反応が起こる。
一過性に細動脈を収縮させるのであるが、この反応は数秒から数分間とされている。
この一過性収縮によって血小板が凝集する。
そして凝血塊が作られ止血する。

この反応は血管内皮細胞から分泌されるエンドセリンと血小板から分泌されるセロトニンの作用によるものである。
この働きに関わるセロトニンは発痛物質でもある。

その後に今度は血管の拡張が起こる。
拡張時間は長く、数十分から数時間に及ぶとされているようだ。

なぜ血管拡張反射が起こるのだろう。
それは強い発痛作用を起こすことによって動きを抑え、炎症反応を促進することで治癒に導こうとする体内における調節作用である。

この血管拡張にかかわるのが「カリクレイン・キニン系」と呼ばれる体内調節系である。
血管組織が損傷すると、血漿中のプレカリクレイン(カリクレイン前駆体)が遊離する。
そこに皮膚などのコラーゲンと反応してカリクレインがつくられる。
カリクレインは血液中のキニノゲンを分解し、ブラジキニンという発痛物質が生成される。

ブラジキニンが肥満細胞を刺激するとヒスタミン等が生じる。
こうして炎症反応と強い発痛が起こるのである。
ブラジキニンは炎症病態をつくり発痛にかかわるが、その一方で血圧の調節や心臓の虚血再環流障害を防ぐ作用があるとみられている。
辛い痛みを出す炎症メディエータも、心臓病にとって善玉なのだ。こうした機序は複雑だが興味深い。

いずれにしろ力学的刺激によって引き起こされた損傷も、炎症メディエータによる生化学的な背景によって、痛みが引き起こされていることを知ることができる。

要するに、痛みは決して力学的ではない。
力学的・機械的因子に加えて、生化学的で、心理学的な因子の複合したものとして痛みを捉えなければならないということだろう。

これらの因子の中で、特にどの因子が優位になるのかということについては、これまた決して一様ではない。
個人差があるということになるが、それはストレス・バランスによって表現されているように思える。
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by m_chiro | 2012-11-14 22:16 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)
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