六然社・直伝講習(9.19)「復習Guide ③」
参加者のために「復習のためのガイド」を記しておきます。

③ 小脳による誤差修正作用による適応系

c0113928_10115929.jpg

上の図(伊藤正男先生の著作より転載した)を見ると、眼前に一本の指がある。
この指を左右に振ると、それを見ている眼からの情報は「ブレている指」の映像となる。
逆に、眼前の指を動かさずに頭を左右に振ってみよう。
すると、指は静止したままの状態として映しだされる。

これは網膜からの像に対して、頭位の動きに応じて眼球が頭位と逆方向に動くことで像がブレないように調整されるからである。
この調整は、前庭器官と頭位の動きと網膜からの情報を、小脳の誤差修正機能を介して行っていることになる。

もう少し具体的に辿ると次のようになる。
前庭器官は頭と首の動きを受容する。すると前庭核にその情報を送って、映像がブレないように眼球を逆方向に動かすようにする。

ところがこの回路網には、眼球から前庭器官のフィードバックあるいはフィードフォワード経路は存在しない。要するに自分で誤作動を修正する能力は装備してないわけだ。

そこで、この前庭動眼反射の経路に小脳片葉(系統発生的に古い小脳)に前庭系神経核群の延長部分が挿入されている。反射の正確性を補完するためなのだろう。
こうして前庭系の反射は正確性を高めて、姿勢制御や抗重力筋の制御を行っている。

図からも分かるように、前庭からの信号は苔状線維から小脳の平行線維に入り、プルキンエ細胞に入力される。

プルキンエ細胞からの出力信号は前庭系核に入り、動眼神経(Ⅲ)を興奮させ、逆側の滑車神経を(Ⅳ)抑制して眼球を頭位と反対方向に動かすのである。

このことで外界からの映像はブレることなく認識される。頭の動きに応じて、適当なだけ逆方向に眼を動かすのである。動き過ぎても足りなくても用をなさない。

しかし、ここで網膜からの誤差が生じると、一個のプルキンエ細胞に登上線維(たった1本だけ存在する入力線維)から「誤差修正せよ」の信号が入る。実は、おもしろいことに、プルキンエ細胞という出力系の細胞には、入力線維の入り口が2つあることになる。

するとプルキンエ細胞は、もう一つの入力線維である平行線維(1個のプルキンエ細胞に約8万のシナプスが入る)からの関連情報を長期的に抑制する。この抑制に働くのがグルタミン酸である。

このことでプルキンエ細胞は登上線維からの情報を優先して前庭核に信号を送り、誤差の修正が行われるのである。

姿勢制御や運動系に関する小脳の役割には注目である。
こうした誤差修正を行って適応させている小脳の働きを、治療で利用することは運動認知に欠かせないアプローチでもあるだろう。
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by m_chiro | 2012-09-30 10:17 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(2)
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Commented by アダピー・タケウマ at 2012-10-06 11:00 x
守屋先生、いつもお世話になります。
頭位と眼球運動が姿勢制御系に深く関わっていることが、よくわかりました。
重力場で、頭が身体のてっぺんにあるヒトでは、つなぎ目部分(後頭骨‐上部頚椎、頚胸移行部)にもかなりの負担が掛かってくるのでしょうね。
Commented by m_chiro at 2012-10-06 21:13
そうです。頚眼反射による頭位を代償して身体に歪みが起こります。
姿勢制御系では、頚眼反射や視動反射が重要な指標になります。
もちろん筋・関節の固有受容器とも相関していますね。
今度、ゆっくり練習しましょうか...。
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