ブラッドパッチ承認の明と暗
脳脊髄液減少症 「髄液漏れ」先進医療承認 ブラッドパッチ、健保適用へ一歩
「脳脊髄液減少症」が先進医療として承認されることが決まったようだ。各メディアが報じていた。 本当に髄液漏れで苦しむ患者さんにとっては朗報だろう。 もう一つ、頭蓋療法を行う徒手治療の領域にも明るい兆しとも言えるだろうか。 頭蓋療法では脳脊髄液の循環を促す手法が使われたりする。。ところが脳脊髄液の循環は治療者の感覚に委ねられていて、その役割やメカニズムが明らかになっているとは言えない。 第一に、成書に記載されている脳脊髄液の循環経路そのものが怪しい。 大阪大学名誉教授・解剖学者の橋本一成先生の学説からも、そのことを知ることができる。 以前の記事「再び、第3の循環系「脳脊髄液」について①」でも紹介したが、従来の循環経路では水頭症になるだろうという話でもある。 ウサギやネズミにはクモ膜顆粒は存在しないらしい。実体顕微鏡でも、走査電子顕微鏡でも観察できないのだそうだ。にもかかわらず、アメリカの「脳脊髄液」という大書には「目に見えないクモ膜顆粒から髄液が吸収されていると考えられる」(橋本一成著「解剖学の抜け穴」)とされている。 ところで水頭症の病理では、脳室からクモ膜下腔へ、そしてクモ膜顆粒から静脈洞へ排出されるルートで通過障害がある交通性水頭症として病態分類されている。 クモ膜顆粒は果たして最終的な吸収・排出の部位なのか、実際の循環ルートも明らかになってほしいと願うばかりである。 それだからこそ脳脊髄液の問題に焦点が当たり、関心が集まることで明らかになることがあるのでは、と期待したいのだ。 逆に、根拠がないと証明されることにもなりかねない。それでも、これもまた一歩前進である。 その一方で、この疾患に関する暗部も見え隠れする。 十分な診断基準が確立されているとは思えないからである。 例えば、脳脊髄液減少症による頭痛に「ブラッドパッチ」を行っても、その「軽快率は半数程度」という報告もある(斉藤洋一著「頭痛・疼痛治療の最前線」、2004)。 ブラッドパッチの限界も指摘されているのである。 例えば、この疾患の頭痛は、立位で悪化し臥位で消失するのが特徴とされている。 と言うことは、症状を追うことで診断が行われているのだろうか。 確定的には「RI脳槽シンチグラフィー」で髄液漏れを確認することになるのだろう(シンチグラフィーの図で明らかなように髄液漏れの痕跡が認められる)。 ブラッドパッチで軽快しなければ外科的に硬膜の破れを塞ぐのだろうが、二者の手法の違いを分ける基準は何だろう。 ブラッドパッチの軽快症例は、本当に「脳脊髄液減少症」なのだろうか。 診断基準の曖昧さは、そのままこの病態のよく分からないところでもあるように思えてくる。
by m_chiro
| 2012-05-25 18:35
| 症例
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