「痛み学」NOTE 53. ゲートコントロール理論を補完する考え③
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

53 ゲートコントロール理論を補完する考え
③「ディスアファレンテーション」仮説から鎮痛機序を考える


ディスアファレンテーション仮説に従って、痛みと鎮痛の機序を読み解くと、ゲートコントロール理論を補完するような興味深い仮説になる。

痛みは侵害受容器に対する侵害刺激にはじまる。
その要因として、組織損傷による機械的刺激と種々の化学伝達物質による炎症が起こる。
その痛み刺激は反射性に交感神経活動を亢進させるし、筋スパズムも引き起こす。また座位などの生活習慣姿勢などの身体の不動化も痛みの要因となる。

これらはすべて関節複合体における機能障害(不動化の悪影響、筋のアンバランス、トリガーポイント,脊柱筋の失調)に関与する。
そして同様に侵害受容器を興奮させることになる。

このとき求心性の入力はどうなるのだろう。
痛み刺激を伝達する神経線維は、比較的細い神経(Aδ神経線維とC線維)である。同時に、筋紡錘からのⅠa線維やAβ線維(触圧覚)の太い神経線維からの入力信号は減少する。

「侵害刺激の入力が増大」し、「圧・動きの機械刺激の入力は減少」するという入力の不均衡な病態生理が同時性に伝導されるのである。
この同時性現象は、体幹軸の筋肉のトーンの低下やアンバランスをもたらすことになる。


そもそも「ディスアファレンテーション」とは何か。
「アファレンテーション:afferentation」は、「求心性神経インパルスの伝導」を意味する用語である。
その求心路が破壊されると、インパルスは遮断あるいは阻害される。この状態は接頭語「de」をつけて「ディアファレンテーション」と用語されている
ただし、求心性伝導路が破壊されていない「入力不均衡」の状態は、接頭語に「dys」が付けられて「ディスアファレンテーション」と用語されている。
それは関節複合体機能障害によって侵害刺激入力が増大し、同時に圧・動き刺激入力が減少することを意味している。求心性入力信号のアンバランスという神経病態生理学的な現象をさしている。

この現象は損傷などによる反射性の病態に限ったことではない。
例えば、加齢に伴い関節を構成する複合体では、筋肉、靭帯、椎間板などの軟部組織における柔軟性が失われてくる。関節も同様である。

柔軟性を欠いた組織は機能的変化を伴うために、通常行っている動きに対してさえ耐性も減少する。結果、損傷しやすくなる。それが侵害刺激となり、脳はそれを痛みとして認識する。

こうした求心性入力の不均衡によって、身体にはさまざまな表出が行われることになる。それは痛みの継続であったり、自律神経系のアンバランスからくる不調であったり、身体平衡系の不調や不均衡として表出されるのである。

そもそも反射系は運動系と自律系に出力されている。C線維からの侵害刺激は脳でさまざまに修飾される。だから求心性入力の不均衡が続く限り、身体の不調に陥るリスクも消えることはないのだろう。

同様に、圧・動き刺激の入力も脊髄から大脳に至る中継核に入る。その結果として随意運動が適正に行われ、身体の平衡系が保たれ、自律系の恒常性維持に作用することになる。

鎮痛系の機序という観点に立てば、求心性入力の不均衡を是正することで大きく鎮痛に貢献するのだろう。

入力信号の減少したⅠa線維やAβ神経を刺激すると、入力の不均衡がバランスされることになる。つまりC線維の興奮が抑制される。

ゲートコントロール理論も、ディスアファレンテーション理論から考えると頷けてくるように思うのだが、どうだろう。
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by m_chiro | 2012-04-25 12:36 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(2)
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Commented at 2012-04-26 08:59
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by m_chiro at 2012-04-26 22:12
鍵コメさま、このコメントとても嬉しく思いました。
仲間内で、たびたび紹介するのですが、関心を持ってくれる人が少ないのです。
その上、機序仮説の課題まで、先行きが楽しみになってきます。
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