「痛み学」NOTE 50.ゲートコントロール仮説の鎮痛機序と疑問
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

50.ゲートコントロール仮説の鎮痛機序と疑問

痛みがあると無意識にそこを擦ったり、手を添えたりする。
すると不思議なことに痛みがやわらぐ。
そんな経験は、誰もが少なからず持っていることだろう。
この現象は多くの人の知るところであったが、その機序はよく分からないできた。
そのメカニズムを解説したのが、心理学者のメルザックと生理学者のウォールである。
この理論は、1965年に「ゲートコントロール説」として「サイエンス」誌に発表されている。
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原理は脊髄後角にある膠様質(後角第2層)のSG細胞と、中枢へ情報を投射するT細胞との関わりと作用に集約されている。
要するに、中枢に痛み情報を伝達するT細胞(投射ニューロン)を、そのシナプス前(SG細胞)で抑制するというのである。

痛み情報は、細い神経線維(Aδ線維:1~5μm、C線維:<1μm)が担っている。
ところが、太い神経線維(Aβ線維:12~20μm)が触刺激によって興奮すると、SG細胞を興奮させてゲートを閉めてしまう(シナプス前抑制)
したがって投射ニューロンであるT細胞のシナプス前(SG細胞)で、痛覚線維からの情報は抑制されてしまう。結果的に、T細胞には痛覚情報が伝わらない、という機序になっている。

この理論は、痛みの生理学における組織学的研究が幕を開けた1960年代の仮説である。
多くの人が納得し、魅了させられた理論とされている。

ところが組織学的解明が進むにつれ、抑制細胞であるSG細胞なるものが、実は仮定の産物であったことが判明する。これはゲートコントロール仮説の理論的破綻でもあった。

それでも触刺激で痛みがやわらぐという現象は確かに存在するわけで、ゲートコントロール説はまたぞろ修正が加えられて徒手療法を裏付ける仮説として尊重されている。
この仮説も今では、SG細胞は抑制の「介在ニューロン」と変更され、投射ニューロン(T細胞)を直接抑制するという機序が想定されることになった。

それでも疑問として残る。
なぜ、太い神経線維(Aβ線維)が入力されると痛覚線維は抑制されるか、ということである。
そこにどんな法則性があるのだろう。

疼痛抑制システムの賦活には中枢系の関与なしでは考えられないことであり、ゲート理論はまだまだ研究や考察を積み重ねることが必要なようである。
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by m_chiro | 2012-03-26 17:59 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)
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