「聞く力」(文春新書)
c0113928_1222718.jpg医療におけるスキルの中で「問診」は重要であると、何度聞かされてきたことだろう。

何しろ診断に導くための要因で、問診は80%以上の確率を占めている、とされている。それに身体診察を加えると90%の確率になるそうだ。

ところが近年、問診の基本姿勢に変化が見られるようになった。
NBM(物語に基づく医療)の重要性が指摘され、昨今では問診から「聴取」という姿勢が重んじられるようになっている。

問診は、どちらかと言えば、医師が主導してフローチャート方式で問いかけながら、想定する疾患にたどり着こうとする手法である。
聴取は、インタビューである。相手が何を考え、どう思っているかを聴きだすスキルである。

「聴」という漢字を分解すると、耳と目(目は吊り上げずに横にして穏やかに)、それに心、これらを十分に使うことと解釈できる。
だから、聴き手が一方的に話したのでは、聴取足りえない。
相手の話を引き出すのが、インタビューアの仕事になる。
この極意を病歴の聴取に取り入れるとなると、これがなかなかに難しい。

インタビューの名手とされる阿川佐和子さんが、その聞くということに対して自身の仕事を通しての聞くためのヒントを本(文春新書「聞く力」)にした。
これは参考になるだろうと購入した。
それに阿川さんは、近年売出し中の山形産米「つや姫」のコマーシャルを撮っている。
それで親しみもあるし、私も好きな才能である。

ところが阿川さん自身は、本の冒頭から「私はずっとインタビューが苦手でした」と告白している。
それどころか、「正直なところ、今でも決して得意だと思っていません」ときた。
ガクッときたが、読み進むとなかなか味わい深い。
阿川さんの話を聞いているような感覚で耳に入る。
話を聞くとはそういうことか、と思えてくる。そんなヒントが35も語られているのだ。

「相づちの極意」では、河合隼雄インタビューのくだりが語られていて、これも参考になった。
河合先生は著名な臨床心理士だが、患者さんにアドバイスはしないのだそうだ。
アドバイスしてうまくいけば感謝されるが、うまくいかなかったときは恨まれるからだと言う。
だからただ相手の話を聞くだけ。
「そうか…」と相づちを打って、「それで?」と話を促すだけ。

「ただ聞くこと。それが相手の心を開く鍵なのです」と河合先生がおっしゃったことが、阿川さんの後ろ盾に思えて、意を強くされたようだ。

随所で、なるほどなぁ~、と思いながら一気に読んだ。
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by m_chiro | 2012-03-09 12:27 | Books | Trackback | Comments(2)
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Commented by naguradou at 2012-03-09 15:33
先生、こんにちは。

いつもブログを拝見させていただき勉強しております。

ぜひ「聞く力」購入し読んでみたいと思います。
Commented by m_chiro at 2012-03-10 08:46
お世話様です。
あっという間に読める本ですが、聞くということに対するヒントは参考になると思いますよ。
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