酩酊歩行から見逃し症例を学ぶ②
② 症例・その後の顛末

この除外した症例はその後どうなったか、気にかかりながらも患者さんからは何の音沙汰もなく9ヶ月が過ぎた。
私も忘れかけた頃に、再び治療にみえたのである。
こんなやり取りがあった。

「その後、どうなりました?」
「お陰さまで大分よくなりました」

「そうですか、それはよかったですね。ところで、病院ではどんな診断でした?」
「病院に行くのは気が重くて、友人の紹介で整形外科医院に行ったんです」
(この整形外科医院は県下でも1,2の患者数を争うクリニックである)

「それで? どうなりました?」
「検査の結果では、動脈硬化の診断でした。それで血流が悪くなっているのだそうです。内科で血圧とコレステロール値を下げるお薬をいただいて、整形では血行を良くするために電気治療と牽引を行っています」

「ええっ、動脈硬化...ですか?」

最近また調子が悪く、腰の具合も悪いので腰を治療したら調子を取り戻せるのではないかというのが、再来院の理由だった。

それにしても「動脈硬化」とは、驚きの診断だった。酩酊歩行にも変化はない。
私は確認のため、9ヶ月前に行ったRombergや継ぎ足歩行などを再度行わせてもらったのである。
結果は、前回よりも大きな動揺である。私には、とても良くなっているとは思えない。
画像検査も含めてしかるべき診療科で検査することを強く勧め、MRIを所有する神経内科医のクリニックを紹介することになった。

翌日、結果が届いた。
「第11胸髄の腫瘍」である。
直ちに総合病院の脳外科に回され頚部X-rayを撮る(上肢の深部腱反射が亢進「++」していたための確認だろうか?)。

今度は脳外科から脊椎外科に回され、そこで出された確定診断は「第11胸髄・ダンベル型・神経鞘腫(Tipe3・良性腫瘍)」だった。

鞘腫があまりにも大きくなっていることもあり、最終的に大学病院に転医入院(40日間)で再検査・手術が行われた。
鞘腫は癒着もなく、神経を傷つけずに袋ごと摘出、椎弓等を切除骨盤からの骨移植を行いボルト固定されたが、障害もなく痺れなどの異常感覚が少し残る程度に回復している。

一安心した症例である。

さて結果は良好であるものの、私としては推論が大きく外れてしまった。
小脳と第11胸髄の違いである。

私はどこで推論ミスを行ったのだろう。ここが重要な反省点になる。
その確認項目をまとめると以下の通りでる。

1.Ronbergテストの正確な判断基準を再確認すること。
2.酩酊歩行が数歩で安定化したわけは?
3.上肢・下肢ともに深部腱反射が亢進(++)をどう解釈するか?
4.バビンスキー反射の陽性と疾患の状態との関連を再確認する。

(反省点から学んだこと、更に次回に続く)

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by m_chiro | 2012-03-07 08:54 | 症例 | Trackback | Comments(2)
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Commented by bancyou1965 at 2012-03-07 14:13
先生、こんにちは。
私には、小脳の病変しか思い浮かびませんでした。

先生が行われた、深部反射などの検査結果、歩行が元に戻るなど胸随腫瘍とは想定外ですね。

しかし、動脈硬化とは。。。
Commented by m_chiro at 2012-03-08 17:48
bancyou先生、神経学テストや徴候は形通りでは見逃しやすいですね。
私も「動脈硬化」には驚きました。
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