関節が固着(フィクセーション)すると痛みは起こるか?
「フィクセーション」は「痛み」にどうかかわるのか。あるいは無関係なのか。
これもまた興味深いテーマである。

フィクセーションは仮説の一つであるが、実証されたものではない。
だが、関節の動きやジョイントプレイが失われている現象を臨床的には頻繁に経験するし、痛みをもつ患部には可動制限が伴っていることも多い。

カイロプラクティック治療は、この可動制限を最終的に解除することが治療目的にもなっている。
前回の記事で紹介したキャシディDCは、フィクセーションと痛みの関わりについて次のように述べている。

「背部痛というものは必ず反射的に筋スパズム、筋のコリ、そして可動制限を伴うものであり、マニピュレーションは反射作用を通して筋を弛緩させ、痛みを減少させ、結果として正常な可動域を回復するのです。しかし、これを完全に証明するにはまだまだ研究が必要です。….カイロ大学のカリキュラムは、今後、よりフィクセーション理論に基づく診断の正当性を立証するという方向に進んでいくと思います」。

この解釈によると、フィクセーションは周辺の筋スパズムや筋のコリによるものと理解できる。が、マニピュレーション(キャビテーションを含む関節操作)は可動制限された関節に向けられる。
それはあくまでもマニピュレーションによって、間接的に周辺の筋を反射作用で弛緩させる効果をもたらすからである。

筋の弛緩がもたらされると、固着した関節の可動域が回復する。
フィクセーションには「痛み」が伴いやすいが、それはフィクセーションが素因であるということではないのである。
だとすればマニピュレーションは、筋スパズムや過緊張を解除するための間接的効果を狙った一つの操作手技ということになる。

カイロプラクティックが主張してきたような特異的な変位を解除する手法には、多くのスキルが開発されてきたが、フィクセーションには特異的も何もないはずである。

それでもマニピュレーションが特異的でなければならないという原則があるのであれば、特異的なコンタクトが痛みに対してどれほどの意味を持つのかは大きな疑問である。

キャシディDCの解釈を受ければ、フィクセーションを解除するための特異的な操作手技に捉われる必要はない、と理解できる。
カイロプラクティックは伝統的な考えに固執することなく、「それはなぜか」を考えなければならないと思う。

フィクセーションの状態では著しくⅠaやAβ神経の活動が低下する。マニピュレーションは、このⅠaやAβ神経の活動を刺激することで、C線維の活動を抑制するという鎮痛機序が提示されてもいるのである。
そして、フィクセーションを解除することは痛み系の解除だけではない。反射的にもたらされる自律系の解除にも影響するもので、その影響に関する取り組みが待たれている。
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by m_chiro | 2012-03-05 12:47 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(2)
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Commented by sansetu at 2012-03-06 11:24
関節の機能性固着(癒着変性したような器質性と分ける必要ありなので)のほとんどは軟部組織由来だと思われます。その解除は直接的に周囲組織にアプローチするか、遠隔アプローチするか、となりますよね。この時に事前に、他の主訴とはあまり関係のない部位のROMや圧痛とかを検出しておいて、患部周囲筋に解除的アプローチすると、その検出部位も改善することが多いです。つまり患部もキーボードの一つであり、患部からでも脳全体のプログラムに影響するという考えてみれば当たり前でしかないことを、このところ意識的に臨床で確認しています。
Commented by m_chiro at 2012-03-06 21:29
sansetu先生、全く同感です。私は一方手を患部へ、他方手であちこちスキャンして、患部の組織が緩むポイント(抑制バランスが起こる部位)を治療ターゲットにする方法を試みていますが、これも同じ手法で「脳全体のプログラム」に影響しているからでしょう。
先生と同じような考えを試みていることを知って嬉しく思ています。
先生のPLPや認知療法の概念にも、わくわくさせられています。
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