背骨のズレが痛みの原因にはならない
カイロプラクティックの世界的な学会である「世界大会」が東京で開催されたのは1997年のことだった。
WFC(世界カイロプラクティック連合)が主催し、WHO (世界保健機構)が後援している。日本で開催された最初のカイロプラクティックの国際会議だった。
当時の日本におけるカイロ業界の現有勢力が結集して世界大会を盛り上げたのである。
世界30ヵ国から約1,800名が参加しており、その盛況さは国内外の関係者からも特筆された内容だったと思う。
世界の著名な研究者が、メーンテーマ「頸椎の障害と治療」について講演している。

中でも印象に残っているのは、ケベック・タスクフォースからの発表であった。共著者のひとりであるデビッド・キャシディ(J.David Cassidy DC,PhD.;カナダ・サスカチュワン大学教授;下の写真)が、「むち打ち疾患に関するケベック調査特別委員会」を代表して、世界に先駆けての基調講演を行った。
おそらくメディカルな領域でも特に関心を寄せた発表であったろう。

結論を言えば、頸椎カラーはできるだけ装着しない方が早くよくなる、ということに尽きる。だが、個人的には学会の舞台裏で行われたキャシディDCへのインタビューがとても興味深かった。

キャシディDCは、「カイロプラクティックのスタティック・パルペーションは軟部組織の硬直や痛みを確認するために行うもので、いわゆる[背骨のズレ]を探すためのものではない」ということを前提にして話を進めていく。そこへ、「では、あなたはサブラクセーションを信じていないということですか」とインタビューアが突っ込む。

「痛み」と「背骨のズレ;サブラクセーション」の関係は、信じる信じないという問題ではない。存在するか否かにある。
キャシディDCは “The New England Journal of Medicine;NEJM”という著名な学術雑誌にも論文を発表している。「NEJM」に論文が掲載されたカイロプラクターは彼以外いないだろう。それほど研究者としても傑出している。そのキャシディDCが研究者として明言する。

「背骨のズレが痛みの原因になるという証拠は存在しません」。
「また、脊椎の微小な変位、すなわちズレというものが痛みの原因になるということを実証した人はいまだいないのです」。


学術研究の進展は、それまでの理解や解釈を時代と共に変えてきた。
その結果として、明らかになってきた学理に則して自らの理論を前進させる姿勢が必要になる。
こうした事態に至れば、業界が一丸となって前進することが必要なのだが、それが簡単にはいかない。
過去の実績や栄光あるいは遺産に執着しがちになるからで、脱却するには強い意志も必要になる。

「カイロジャーナル72号」(科学新聞社)の「論壇」で、米国カイロプラクティック教育評議会(CCE)が「教育の新基準」の変更を迫られていることを報じていた。
この新基準の案件が論争の的になっているらしい。火種は、「サブラクセーション」の用語が排除されていることにある。確かに、サブラクセーションには新たな概念や解釈が必要だろう。古典的な概念から脱却しなければ消え去る運命が、ここにもあるようだ。
[PR]
by m_chiro | 2012-03-03 08:53 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(2)
トラックバックURL : http://mchiro.exblog.jp/tb/17588246
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by junk_2004jp at 2015-01-22 20:23
加茂です。

2年前、義母は義父の運転する車の助手席に乗っていて事故(むち打ち)にあった。
アクセルとブレーキを間違えて踏んで電柱に激突した。
義母は今でも首に強い痛みを訴える。
外見も明らかに変化した。
首が前方に突き出ている。
この症例は損保保険一切関係がなく、医師は娘婿の私。
私は筋肉の危険な損傷なんだろうと思う。
頭の重さは5キロ。
5Kのスイカを車に載せていて、衝突した時のスイカに加わる力を計算。
構える(防御する)のと不意では結果は大きく違うと思う。
Commented by m_chiro at 2015-01-23 18:06
先生、今年もご指導にほど、よろしくお願い致します。

確かに、不意の損傷と、構えていて受けた損傷とでは、同じむち打ち症でも程度や治り方が違うように感じます。不意の損傷は振幅もそれだけ大きくなり、筋への負荷や、損傷の程度も大きくなるのでしょうね。若い柔軟性のある筋肉と、老化してきた筋肉でも、傷み方が違ってくるのでしょうか。お母様は大変な事故に会ってしまわれましたが、先生が筋損傷の診方や治療をされているのが不幸中の幸いかもしれませんね。快癒を祈るばかりです。
<< 関節が固着(フィクセーション)... 「見・診・観」三様 >>



守屋カイロプラクティック・オフィスのブログです
外部リンク
カテゴリ
以前の記事
お気に入りブログ
最新のコメント
最新のトラックバック
ほとんどがMPSなんだけ..
from 心療整形外科
月経が再開した
from 心療整形外科
TPは痛みの現場ですらな..
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
脊椎麻酔後頭痛について
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
起立性頭痛
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
「5%の中に本当の椎間板..
from 心療整形外科
髄液循環系と揺らしメモ
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
医師はユニコーン(架空の..
from 心療整形外科
末梢神経の周膜と上膜にも..
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
また勉強になりました。
from 漢のブログ
ライフログ
検索