イエローフラッグと認知療法①
①心理的な要因を認識させる必要がある症例

信号機に譬えた臨床推論の手法は、最初に危険な病態や慎重な検査が必要な徴候を除外することからはじまる。これはレッドフラッグにおける危険徴候を病歴聴取の中から見極めることでもある。

筋骨格系疾患における除外すべき疾患は全体の1~5%とされ、その他の95~99%は自己限定疾患(グリーンライト)として治療対象とされる。自己限定疾患はやがては治る病態である。

とは言っても、そうは問屋が卸さないのが世の常である。治るはずのものが予測通りに治ってくれない。
良くなったと思っても、たびたび再発する。
あるいは、思い当たるきっかけもなく発症する。そうして慢性化する。
そんな時は背景にある心理社会的要因に目を向けることが必要になる。
この心理社会的要因がイエローフラッグとされる兆候である。

イエローフラッグの兆候が浮かび上がると、私は認知療法を試みることにしている。
これは脳イメージングを用いて身体反応を解除する手法である。イメージされると、抑制バランス反応が起こる。中には、レジスタンス反応が起こる人もいる。

例えば、先日来みえている患者さんは左鼠径部から膝周囲までの痛みが起こる。それも朝の起床時に限られている。動き出せば問題はない。

思い当たる原因は、姑の介護で寝返りさせる度に左の近位筋に力をいれて踏ん張るせいだろうかというのが患者さん自身の説明であった。姑は90歳になるそうだ。

その姑が認知症で、夜間にたびたび起こされて辛い日が続いているのだそうである。
それでも、認知症で童心に返ったよになっている姑の反応が可笑しくて笑が絶えず、それが救いにもなっているそうだ。

身体へのアプローチをしたところ、良好な状態になった。
「よかった!」と思っていたある夜のこと、トイレに行きたいと何度も起こされた。実際はトイレに行きたい感覚だけで終わる。それを何度も繰り返すので眠れない。
ついには姑さんに苦言を吐いてしまった。
するとボケていた姑が正気になって、嫁としての姑に対する態度や発言に嫌味や説教を述べのただそうだ。このことが相当応えたらしい。過去のいざかいまでが思い出されて心理的要因が増幅したようである。
朝には再発して、今度は歩行でも痛み出した。

イエローフラッグは、7つのカテゴリーに分けられている。
その中に「感情」と「家族」のカテゴリーがある。
例えば、「普段よりとても怒りっぽい」とか、「自分は役立たずで必要とされていない」といった感情問題もある。また、「家族の懲罰的な反応」といった家族問題が指摘されている。

そこで脳内イメージを用いた認知療法を試みる。
患者さんに、その時の状況をリアルにイメージさせるのである。それだけで身体反応に影響されている心理的要因があると、抑制バランスが起こる。
あるいは、レジスタンスという身体表現がみられる。

この患者さんの抑制バランスは顕著だった。筋活動が著しく低下した。MMT評価の「1」である。
「筋の収縮は起こっても関節運動は起こらない」レベルである。
下肢を拳上させるように指示しても、あるいは持ち上げるように支えても、下肢がベッドに張り付いたように動かせない。催眠術にかかった人と同じようになる。

頭蓋内の内圧変動を観ると、停滞したポイントを感じる。
リリースされるポイントを探って2ポイント・リリースを行った(この時のタッチは出来るだけ面を使った方がよさそうだ)。
リリースされたところで、抑制バラランスをみるとOKである。

再び、同じイメージをさせてみた。すると、またピクリとも動かせなくなった。
また、頭蓋内停滞ポイントを観てリリースする。それを反復するのだが、どうも抑制バランスが解除できない。

結局、この患者さん5回まで反復させたが抑制バランスは解除できなかった。途中、「もう思い出したくない!」と泣き言われた。

最終的に6回目で抑制バランスが解除され、その後は身体反応も起きなくなった。
歩行でも痛みがないが、歩行リズムが修正されていない。
これは新たな運動リズムが回復されていないことによるものだろう。
小脳の誤差学習機能を利用して修正すると、歩行もスムーズになった。

驚いたのは患者さんの方で、心理的な要因が身体の不調に影響するなんてと思ったようだ。
思い込みや信念といった心理は、なかなか身体的不調の改善を邪魔することがある。
イエローフラッグは、そうした手がかりを探る意味でも大切だと思う。
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by m_chiro | 2012-03-01 15:00 | 症例 | Trackback | Comments(0)
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