神経系のフィルター能力
「目から入ってくる溢れるような視覚情報を "くっきり"させて脳に伝える仕組みの一端を解明」(自然科学研究機構・生理学研究所)

米国神経科学会雑誌(ザ・ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス)2012年2月15日号(電子版)に掲載された上記の研究は、とても興味深いものだった。

視覚情報は網膜を通して視床に中継され、視覚野で映像が結ばれる。
多くの情報が一気に入り込むと、脳は明確な整合性のある画像を結べないのだろう。
研究チームは、情報伝達の中継点である視床の外側膝状体が、情報をフィルターにかける役割を担っていることを突き止めたというものだ。
フィルターの役割に加担しているのがグルタミン酸で、このアミノ酸物質が情報の取捨選択を行うことになる。

つまり網膜からの多種多様な情報入力は、最初に多シナプスされた視床の外側膝状体に入ると、次に入ってくる情報に対してグルタミン酸を漏出してまわりのシナプスの反応を低下させるらしい。 
中継点である視床には無数の視神経が集まっていて、それぞれにシナプスが5~30個程度並んでいることを電子顕微鏡で明らかにした。これは相当数のシナプスの数である。

そこに入力されてきた視覚情報は、最初の情報を優先して後からの情報を低下させることで、明確で整合性のある画像が作られていることになる。だから、視覚野に入る前に不必要な情報はカットされているわけだ。

この論文を読んで、小脳における誤作動学習メカニズムに、同様の情報伝達のフィルター機構の存在がダブった。

小脳にはプルキンエ細胞という特殊な樹状突起がある。
この細胞群は小脳皮質に奇麗に並んでいて、そこに2種類の情報の入力線維が入ってくる。情報の入口が1つの細胞に2つあるのも特殊である。ひとつは顆粒細胞からくる20万もの平行線維が垂直にシナプスしている。そして、ひとつのピキンエ細胞に8万個ほど平行線維からの入力があるとされている。もううひとつはプルキンエ細胞にまきつきながら上がってくる登上線維である。

ひとつの細胞に入力される平行線維が8万個に対して、登上線維は1本という奇妙な構図である。
平行線維はグルタミン酸によるシナプスであるから、視床での外側膝状体シナプスと同様の仕組みなのだろうか。

登上線維から運動情報が誤っているという入力が入ると、いわゆる誤れる平行線維からの情報はスイッチオフになり、運動出力が修正されて学習されるという仕組みなのだ。
プルキンエ細胞は運動協調性に関する小脳からの出力系であるが、1本の登上線維からの情報を優先して、平行線維からの入力を抑制して運動系の誤作動を修正しているわけである。
こうしたシナプスにおける情報系のフィルター機構は、多くの入力情報が処理される必要があるところに存在しているのかもしれない。
そう思いながら、この論文を読んだ。
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by m_chiro | 2012-02-16 17:43 | センタリングの技法 | Trackback | Comments(0)
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