バビンスキー反射を学びなおした
運動系の障害をみるときのルートは3つに分けられる。
ひとつは大脳皮質から脊髄の上位運動ニューロン系、2つめは前角細胞から末梢神経軸索の終末までの下位運動ニューロン系、3つめは筋・筋膜系である。
筋骨格系にかかわる痛みは、85~99%までが「自己限定疾患」とされている。ほとんどが徒手療法でも対応できるわけだが、わずか5%以内とはいえ除外すべきものが紛れ込む。
麻痺の疾患となると、徒手療法では除外鑑別が肝要である。

さて、昨年末に除外した患者さんの確定診断が出てきた。
結果の罹患部位は、私が推測した部位とは違っていた。除外すべき疾患に間違いはなかったのだが、罹患部位を誤ったのは一体どこに落とし穴があったのだろう。

見落とし原因の多くは病歴採取にあるそうだ。
疾患名を知らなかったとするものも多くあるが、「特定の情報に捉われて身体所見のとり方が不十分だった」とするのが10%ほどあるとされている。
どうも、その10%に含まれる「不十分な身体所見」が、罹患部位を誤ったようだ。

毎日が雪で、冷え込む夜に暖を取って、行った神経学的テストを反芻しながら、「ベッドサイドの神経の診かた」(南山堂)でおさらいをした。

バビンスキー徴候は、錘体路障害に対して信頼度の高いテストである。
でも錘体路障害があるからと言って、100%バビンスキー陽性とは限らない。逆に、バビンスキー陽性だからと言って、錘体路が器質的に破壊されているとは限らないということでもある。一過性の現象もあるらしい。母趾が背屈したからと言って、4趾に開扇現象が診られなければ、機能も正常で症候的にも問題ないこともあるようだ。つまり、反射出現の程度と錘体路の障害の程度は並行するものではないし、障害部位を特定するものでもないということである。

私が経験した中で、それは見事に母趾が伸展し4趾が扇形に開いた症例があった。クローヌスも典型的で、腱反射も指で軽く叩いただけで亢進(4+)していた。
そんな陽性結果が画像のように頭に染みついている。
だから、はっきりしないものは(±)と判定してしまう。でも、あやしいと思ったら同類の検査を数種類組み合わせて確認する必要があるのだろう。例えば、チャドック反射やオッペンハイム反射、ゴードン反射などと組み合わせることが必要である。
c0113928_22193583.jpg

深部腱反射の検査もそうだが、患者さんの緊張が解けた状態で行われなければならない。寒いときは足の緊張が解けないので、温かくする配慮も必要のようだ。

基本形は下肢の完全伸展であるが、緊張があるときには股関節や膝関節をやや屈曲すること。刺激はハンマーの柄を使うが、鍵の先端や安全ピン、爪楊枝の頭など、尖ったものが反射も出やすいのだそうだ。
バビンスキー反射は刺激の重積が必要なこともあるので、一回の刺激で止めずに数回繰り返すことが肝要らしい。また母趾まで刺激すると、母趾が底屈することがあることにも注意しなければならない。健側を刺激して障害側の母趾が伸展する「交叉性伸展反射」という現象もあるとか。

一通り検査のフォームを覚えたからといって、正確な検査を導き出せるとは限らないのだ。
この反射は、いわゆる「原始反射」のひとつなのだろう。発育に従って消失するからだ。生後2歳までは陽性にでることが多いが、これは単に錘体路の発育過程にあるというだけの話だ。

バビンスキーの検査で、正常では足底反射が起こる。足底反射の消失は、錘体路障害と考えられるわけである。これとて正常者で足底反射のない例が10%ぐらいはあるらしい。もしも足底筋や末梢神経の障害で、足底筋の麻痺があり伸筋が正常であればバビンスキー反射は錘体路の障害に関係なく陽性となる。

そう学んでくると、急性期の脊髄横断症候などでは「脊髄ショック」によりすべての反射が消失する。下行性の脳の命令がなくなり、脊髄の機能が抑制されるからからだ。これでホッとするわけにはいかない。数日後には反射機能のいくつかが再出現するからで、このときには痙性麻痺が起こる。

「ベッドサイドの神経の診かた」は良書である。版も重ねて現在は17版となっている。あわせて、最近気に入っているのが「神経診察クローズアップ」(メジカルビュー社)である。イラストや図が豊富でビジュアル的に学べるからである
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by m_chiro | 2012-01-10 22:20 | 症例 | Trackback | Comments(2)
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Commented by アダピー・タケウマ at 2012-01-14 18:43 x
守屋先生、本年もなにとぞよろしくお願い申し上げます。
バビンスキー反射や深部反射は刺激の方向や部位によって反応が違ってくると思います。
深部反射は、減弱、亢進、左右差を主に上位と下位運動ニューロンの障害鑑別として評価しますが、もっと細かく見たり、またうまく使うと治療にも応用できると思います。
Commented by m_chiro at 2012-01-15 19:43
アダピー先生、こちらこそよろしくお願いします。
バビンスキー反射や深部反射の裏技を応用しているようですね。
大変興味深いことです。今度、教えてください。
富山で宴会しましょうよ!
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