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電気刺激鎮痛法の仕組みを考えてみた
メルザックとウォールによる ゲート・コントロール理論が発表されたのは、1965年の「サイエンス」誌上である。

この理論の核心的な部分は、脊髄後角における抑制細胞(SG cell)の存在であった。
ところが、その抑制細胞が存在しないことが分かり、ゲート・コントロール理論は破綻したとされている。

それでも、この理論が主張した現象は認められるところで、応用的な鎮痛法が現実に行われている。経皮的神経電気刺激療法(TENS)も、そのひとつだ。
100HZ前後の電気刺激で、この方法は皮膚からAβの触神経を刺激することで鎮痛を促すことを狙っている。

電気刺激療法は他にもある。
読売新聞の「医療ルネッサンス No.5204」は、体内に電気刺激装置を埋め込んで、そこからリード線を脊髄に入れて鎮痛を促す「脊髄電気刺激療法(SCS)」が紹介されていた。

電気刺激鎮痛法の仕組みを考えてみた_c0113928_220365.jpg

これも太い神経線維であるAβを刺激して鎮痛を促すゲート・コントロール理論の応用であろう。

また、大脳皮質や脳に電極を埋め込んで鎮痛を促す方法も試みられている。そのひとつである「脳深部刺激法(DBS)」は、下行性疼痛抑制系のスイッチとなる起始核(中脳灰白室)に電極が埋め込まれる。

また視床痛に用いられ、50%の有効率とされる「大脳皮質運動野刺激法(MCS)」は、視床より上位の運動野に埋め込まれた電極からの刺激で徐痛する方法である。
体内に電極を埋め込む手法は、いずれも侵襲的かつ不可逆的である。安易に行うべきものではないだろう。

カイロプラクティックの治療原理として近年台頭してきた理論は、「ディスアファレンテーション;求心性入力の不均衡」である。

煎じ詰めて言えば、痛み信号(AδおよびC線維)の求心性入力が増大すると、AβおよびⅠa線維からの求心性入力が低下する。この求心性入力の失調の同時性が起こることを問題視している。
そこで痛覚刺激を抑えてAβおよびⅠaを入力することで、C線維の興奮を抑制するという概念である。カイロプラクティックにおける痛覚系コントロールの機序を解説している。

他にも、下行性疼痛抑制系に働きかけるとされる手法がある。これらの手法は、鍼灸はじめ中脳灰白室を賦活させる手技として、徒手療法の狙いとするところでもあろうか。

ゲート・コントロール理論の提唱者の一人であるP.ウォールは、「痛み学」(名古屋大学出版会)の序文に「理学療法や作業療法は眠れる巨人である」と書いている。
痛みの治療に理学・作業療法の果たす役割が大きいのに、未だその能力が活用されていない、という叱咤激励の言葉として受け止めた。

故・熊澤孝朗教授は、生前「巨人よ目覚めよ!」とのメッセージを残し、徒手療法に対して同様の激励を送ってくれた。

ここは、しっかりと痛みのメカニズムを学ばなければならない。そう自分に言い聞かせている。
by m_chiro | 2011-11-24 17:59 | 痛み考
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