侵害受容性疼痛の5段階位相
「筋骨格系の痛みのメカニズム」
加茂先生の記事の中で「Phases of Nociceptive Pain」というタイトルの動画を紹介されていた。

とても分かりやすい動画だったので、ここでも紹介しておきたい。
説明は分からなくても動画だけで十分に痛みのメカニズムがイメージできる。

この動画では、侵害刺激による痛みが5つの段階によって作動する感覚であることが解説されている。


以下に、その5段階のそれぞれの役割をまとめてみた。

1.変換(Transduction)
機械的刺激や化学物質などで生体が侵害されると、その侵害刺激を侵害受容器(nociceptor)がキャッチする。キャッチされた刺激は侵害受容器でエネルギー変換される。つまり電気信号に変わる。これが第1段階である。

2.伝導(Conduction)
エネルギー変換された電気信号は、どのようにして神経細胞を伝わるのか。それは神経細胞の膜の透過性の変化に依存しているのである。膜の透過性が変化すると電位の逆転現象が起こる。このことで電気信号に変換した侵害刺激は1次ニューロンを伝わって脊髄神経節に届く。電気信号なので痛み物質は移動しない。
野球場などで、観客が立ったり座ったりの動作を繰り返していくことでウエブが起こることをイメージすると分かりやすい。

3.伝達(Transmission)
1次ニューロンは脊髄に入り、そこで2次ニューロンとシナプスする。2次ニューロンは視床より上部で高次の3次ニューロンとシナプスする。これらのシナプス間隙では伝達物質が放出される。伝達物質が放出されて、痛覚信号は更に上行伝導する。
痛み刺激が痛み感覚として認知される経路は、直行で脳に届くわけではない。シナプスによって乗り継ぎが起こなわれる。実は、この1次ニューロンと2次ニューロンにおけるシナプスの存在がとても重要で、それは5番目の段階である修飾作用(modulation)に関わってくる。これもホメオスタシスの一環なのだろう。

4.認知(Perception)
大脳皮質に伝えられた痛み信号は第Ⅰ・第Ⅱ感覚野に届き、ここで痛み感覚として認知され、我々は痛みとして感じることになる。

5.修飾(modulation)

痛み系は鎮痛系と車の両輪のように機能するシステムなのだろう。
脊髄後角で放出される伝達物質はグルタミン酸とサブスタンスPである。特に、グルタミン酸は痛みの促進や可塑性に関わってくる。
痛みを警告信号より更に強固にして心身にダメージを与えることは、ホメオスタシスにとって避けるべき戦略なのだろう。
中脳灰白質からγアミノ酸(GABA)を、延髄大逢線核からセロトニンを、青班核からノルアドレナリンを放出して脊髄後角で痛み信号を抑制するように作用する。
この下行性疼痛抑制系がうまく機能しないと、痛みは促進される。この調整システムによって痛みの信号は修飾されているのである。
もしも神経が損傷される病態がおこると、抑制物質のGABAは興奮性に働くことになる。

こうして痛み信号は修飾作用によってコントロールされながら感覚野に届けられている
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by m_chiro | 2011-10-01 10:04 | 痛み考 | Trackback | Comments(3)
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Commented by タク at 2011-10-02 09:13 x
先生、こんにちは。
先生の解説、更に洗練されてますね。
全部、レスをつけると長くないってしますので、5番だけ。
2種類の痛みの抑制系が有ると言う事ですね。

日本ペインクリニック学界誌 2002年3号
日本ペインクリニック学会第36回大会 リフレッシャー基礎コース

脊髄における痛みの伝達
新潟大学大学院医歯学総合研究科生体機能調節医学専攻器官制御医学講座麻酔科学分野
馬場洋

P 2 of 5
http://www.journalarchive.jst.go.jp/jnlpdf.php?cdjournal=jjspc1994&cdvol=9&noissue=3&startpage=139&lang=ja&from=jnltoc

Keyword:
EPSP( excitatory postsynaptic potential)
IPSP (inhibitory postsynaptic potential)

加茂先生のサイトにも同じようものが。
>痛みが慢性化するのはなぜか?「痛みが慢性化するのはなぜか?」
http://www.tvk.ne.jp/~junkamo/new_page_181.htm


>痛み系は鎮痛系と車の両輪のように機能するシステムなのだろう。
いい表現ですね。
Commented by タク at 2011-10-02 09:21 x
「gamma-aminobutyric acid」
γ-アミノ酪酸(GABA)。

Cl-チャンネルを開くその様子をアニメーションで見て見ましょう。(Start ボタンを押す)
http://www.e-dent.info/neuron/gabareceptor01.html

GABA誘導体のお薬が有る。GABAトランスポーター
ガバベンチン。商品名:ガバベン。
アニメではベンゾジアゼンピン(BDZ)もCl-ャンネルを開く。
ベンゾジアゼンピンに構造が似たチエノジアゼピンの代表がエチゾラム。商品名:デパス、有名ですね。

そのそも、細胞外液(ECF)と細胞内液(ICF)が分かってないと話になりませんが、医者は誰も知ってるでしょう。
Commented by m_chiro at 2011-10-02 22:41
タクさん、いつも有難うございます。
日本ペインクリニック学界誌 2002年3号の抄録、それぞれがよくまとまっていて参考になりました。

膜電位に関する話題は面白いですね。生き物の基本系ですから、ややこしいですが興味が尽きません。
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