こんな参考書が欲しかった②
c0113928_1231257.jpg
G.J.トートラには、解剖学や人体の構造と機能に関する著作がある。
通常は単体の科目についてまとめられているが、この本は「解剖生理学」として、二つの視点から編纂されている。
解剖と生理を関連付けて学べることは、とても有難い。
しかも「ボディセピーのための」視点が強調されているから、徒手療法家にはこたえられない一冊である。
随所に「臨床関連事項」というコラムもあって、とても参考になる。

例えば、頭痛の患者さんがみえたらレッドフラッグを除外することが肝要である。
これは聞き取りや身体所見でかなり高率に危険な頭痛を除外できるとされる。
基本的なポイントは「突然の発症か」、「憎悪しているか」、「今までで最悪か」という問いで、これに否定的であれば重篤で危険な脳血管障害はほぼ除外できる。
だが、我々の守備範囲の損傷、例えば交通事故による障害で、頭痛などの症状に出会うと徒手療法家にとっても困惑させられることがある。

こうした問題にも、鞭打ち損傷による過伸展で傷害される筋群と過屈曲で傷害される筋群について図入りで解説があり、胸鎖乳突筋が関わる臨床関連事項についてのコラム(「マニュアルセラピーへの応用」)も書かれている。

1.胸鎖乳突筋の鎖骨頭に由来する関連痛は耳介の深層および周辺の痛みとして知覚され、「原因不明の耳痛」の原因となる。
2. 胸鎖乳突筋の固有受容器には、内耳に情報提供する大きな役割もあり、「めまい」や「悪心」、「前額部痛」を発症することがある。
3. 胸鎖乳突筋の胸骨頭に由来する痛みは頭蓋冠に関連する。
4.頭蓋冠は帽状筋膜が存在するだけなので頭頂部の筋スパズムと関連付けないことがある。5. 胸鎖乳突筋に起因する痛みは、咽頭痛、歯痛、顎関節症、眼窩深部痛、過剰な流涙(涙の産生)などの症状も起こす。
6.発痛点の判断と治療が患者の痛みを軽減させる。


こうした臨床に対するマニュアルセラピーの応用なども、各項目ごとに書かれていて役立つ情報が満載である。
学生向けに書かれた教科書として活用する意図があるのだろうが、臨床に従事する徒手療法家にも有意義に学べる本である。
以下に引用した各章の目次だけでみても、いかに広範囲にまとめられているかが分かるだろう。
800頁にも及ぶ全頁オールカラーの内容である。

目次
1 人体の成り立ち
2 化学概説
3 細胞
4 組織
5 外皮系
6 骨組織
7 骨格系1:軸骨格
8 骨格系2:付属肢骨格
9 関節
10 筋組織
11 筋系:頭頸部の筋
12 筋系:体幹の筋
13 筋系:上肢の筋
14 筋系: 下肢の筋
15 神経組織
16 脊髄と脊髄神経
17 脳と脳神経
18 自律神経系
19 体性感覚と特殊感覚
20 内分泌系
21 心臓血管系:血液
22 心臓血管系:心臓
23 心臓血管系: 血管と循環
24 リンパ系と免疫
25 呼吸器系
26 消化器系
27 栄養と代謝
28 泌尿器系
29 生殖器系
セルフクイズの答
臨床関連問題の答
CREDITS
索引

[PR]
by m_chiro | 2011-08-24 12:09 | Books | Trackback | Comments(4)
トラックバックURL : http://mchiro.exblog.jp/tb/16765241
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by sansetu at 2011-08-26 21:01
先生こんにちは。たとえばご紹介の胸鎖乳突筋関連の所見は医学界の「普遍論」(たとえば内科であればハリソンに載るような医学的事実と認定されているもの)となっているものなのでしょうか、それとも流派の経験的見解なのでしょうか。
ただ鍼灸的には経験的にこの記述はとてもよく理解できますし、実際このような観点からの治療を鍼灸師は(経験的に)しているわけですが。
Commented by m_chiro at 2011-08-27 09:04
sansetu先生、おそらくは経験的見解だと思います。
先生がいつも仰っておりますように、医学界の「普遍論」として上がってくるためには「検証可能性」の集積があってのことなのでしょう。とても「反証可能性」が生かされてるとは思えません。ですから経験的な見解は、いつまでも経験論のままで、胸鎖乳突筋に関する記述もその範疇のものではないかと思います。
この本の中では、むち打ち症のメカニズムの記述が見開きで紹介されていて、その中に「筋への損傷」として胸鎖乳突筋に触れています。ここまでは解剖生理と機能に関するものですが、本文とは別にコラムを設けて「マニュアルセラピーへの応用」とし書かれたものの要点を箇条書きで記事に紹介しました。
所謂、本筋の脇扱い、徒手治療者向けのコラムです。
本書での扱いを見ても医学界の普遍論とは思えませんが...。
Commented by sansetu at 2011-08-27 23:14
守屋先生、ありがとうございました。スッキリしました。ということは、トリガーポインマニュアルに掲載されているTPの「関連痛」というものも著者らの経験論のようですね。これなども鍼灸では古くから当たり前の経験論としてあるものとよく似ており、著者らがそういったもの(たとえば経絡・経筋理論)からの影響を強く受けていることを感じるわけです。要は生理学的に証明されたものでないと言うことさえ分かれば私は納得です。
Commented by m_chiro at 2011-08-28 21:42
sansetu先生もご承知のこととは思いますが、アプライド・キネシオロジー(AK;応用運動学)や欧米の他の徒手療法にはMeridian Therapy(経絡治療)として身体のエネルギーラインが頻繁に出てきますから、経絡・経筋理論を組み入れていることは事実でしょうね。
<< こんな参考書が欲しかった③ こんな参考書が欲しかった① >>



守屋カイロプラクティック・オフィスのブログです
外部リンク
カテゴリ
以前の記事
お気に入りブログ
最新のコメント
最新のトラックバック
ほとんどがMPSなんだけ..
from 心療整形外科
月経が再開した
from 心療整形外科
TPは痛みの現場ですらな..
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
脊椎麻酔後頭痛について
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
起立性頭痛
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
「5%の中に本当の椎間板..
from 心療整形外科
髄液循環系と揺らしメモ
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
医師はユニコーン(架空の..
from 心療整形外科
末梢神経の周膜と上膜にも..
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
また勉強になりました。
from 漢のブログ
ライフログ
検索
タグ