治療の守備範囲を守るために:除外診は欠かせない①
福岡での「九州カイロプラクティック同友会・夏期合宿((7月30~31日)」で、カイロ治療の守備範囲を守るためには範囲外の重篤な疾患などを除外する診立てをしっかりやらなければならない、といった内容について触れた。
そんな矢先の福岡帰りの翌日は、治療適応の可否を見極める必要のある新患が4人みえた。

Aさんは内蔵疾患で治療中の患者さんだったが、腰臀部~大腿外側の鈍痛を訴えている。
関連痛との関連性がないと判断し、相対的禁忌として治療を行なった。根拠は運動痛があること。

BさんとCさんは病院で検査を行なっており、問題なしとされている。が、それでも必ず必要な徒手検査を用いて自ら確認する必要がある。

Bさんは、二日続いて落下発作を起こして救急車で搬送されたという女性である。
救急車の中で意識を取り戻したそうだ。検査を行なったが異常は検出されなかったようである。
私も神経学的検査をおこなってみたが、除外すべき結果は見い出せなかった。

身体所見を取ると、左の僧帽筋と斜角筋群が過緊張し、頭部もその方向に引っ張られて傾斜している。
怪我をしたことや過負荷の記憶を辿らせると、1か月前に転倒して左肩を強打している。
その後に「めまい」が起こり病院での治療歴がある。
落下発作の前日には、大きな剪定鋏を使って庭木の選定作業を行なっている。
両腕を使って力のいる作業をしたために、損傷歴のある肩頚部の筋に相当な負荷をかけたのだろう。首から肩にかけて重苦しい痛みがあり、冷湿布を貼り安定剤と鎮痛薬を服用したようである。
彼女は心療内科の患者さんでもあった。

それで思い出したのだが、以前、腰痛で治療にみえた青年が、左の第4指が朝になると曲がり難いことがある、と治療が終わった後で訴えていたことがあった。
診ると、その指の腱が硬くなっている。
腱を伸ばして4~5回も擦過するように引っ張っただろうか、その青年が失神して前のめりに倒れたのだ。
寸前で抱きかかえて事なきを得たが、「何か気持ちが良くなって意識が無くなっていった」と、正気になってから話してくれた。

また、座位で頚部を触診中に失神した患者さんもいた。
この方は、倒れ込んでイビキをかいたのでほんとに驚かされた。
この患者さんも、意識が戻ってから「気持ちよくなって...」と言っていた。

指を摩っただけで失神するなんてビックリ現象だったが、一体、どんな機序が働いたのだろう。
そこで、調べてみたことがある。

動物には「死に真似現象」がある。生き物の生存に関わる行動の抑制反応らしい。熊に出会ったら「死んだふり」をしろと言われたりもしている。効果があるのかどうかは知らない。

幼動物が危険な目にあったり、追い詰められると、「死に真似」行動をとることがよくあるそうだ。
全身の筋肉は弛緩し、呼吸もほとんど止まり、突然死んだように倒れて、血圧は下降し徐脈となる。動かないから死んだものと略奪者は思ってしまう。
腐肉を食べる動物は別にして、たいていは匂いを嗅いだだけで立ち去るので、起死回生の防御反応なのだろう。

循環系の変化から「死に真似」と同じ反応を調べた動物実験の報告もある(前田正信:延髄心臓血管中枢の脳循環調節について;局所脳血流第四巻,1995)。

それによると、前帯状回や前視床下部の一部を電気刺激すると、交感神経の抑制と迷走神経性の徐脈のために低血圧になるのだそうだ。
これと同じ反応が、ヒトの失神の際に循環系の変化で起こる、としている。
ヒトでは、ストレス刺激が防衛反応の代わりに、力が抜けて、めまいを起こし、失神を起こさせるというわけである。

では、ストレス刺激というよりは快刺激が失神につながるのはなぜだろう。
性的な快感も「脳の循環調節」の影響を受けているわけであるから、あながちストレス刺激だけが関与するとは限らない。
鍵は「脳の循環調節」にあり、脳は均一的な循環調節を行なっているわけではない。目的別にスポットライト調節を行うことで生体を維持しているのである。
となると、この患者さんの落下発作は重篤的な病理的問題によるものではないだろう。
その脳の循環調節に関わったのが、一側性に過緊張した頚部および上僧帽筋の問題によるものと判断して、その治療を行なった。

この患者さんは心療内科に通院している。そんな必要もないとは思うが、脳波などの検査の必要性などについては主治医の先生とも相談するように話しておいた。

次に続く
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by m_chiro | 2011-08-05 11:21 | 症例 | Trackback | Comments(0)
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