「痛み学」NOTE45. 筋肉はどのようにして縮むのか③
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

45. ③ 筋収縮の第2ステップ:緩まなければ始まらない(主役はATP)

筋収縮の「滑り説」は、1954年にイギリスのA・F・ハクスリーとH・ハクスリーという同名であるが赤の他人の2人の科学者が別々に提唱した、とされている。
それまでの筋収縮説は、フィラメントがバネのように縮むとみなされていたのである。
それでも「滑り説」では、主に収縮の構造的な仕組みが解明されただけであった。
実際に関与する収縮の作用機序は今ひとつよく分かっていなかったのである。

筋収縮にCaイオンが関与することを最初に論文にしたのは1940年で、日本人のようである。東大理学部動物生理学・鎌田武雄助教授であるが、この論文発表の数年後に45歳で亡くなられている。

それから20年ほど経って、同じ東大の別棟である医学部薬理研究室から輝かしい業績を残した研究者が誕生した。江橋節郎教授である。江橋節朗教授は、カルシウムイオンが筋肉の収縮、弛緩をコントロールしていることを解明したのである。
この収縮と弛緩に関わるATPの役割も明らかにした。
また、「トロポニン」を発見したのも江橋教授だった。その江橋教授も2006年に83歳で逝去されているが、筋の生理学については日本の研究者が大きな貢献をしているのである。

さて、アクチンFの構造をみると、3つの分子から出来ていることが分かる。
c0113928_23554680.jpg

まるで数珠を直線上に繋いだような、しかも2重の螺旋構造である。
この2重螺旋の溝に沿ってトロポミオシンという分子が紐のように走り、そのラインの一定部位に珠上のトロポニンが付いている。江橋教授が発見したのが、このトロポニンである。

トロポニンは、Caイオンの受容体でもある。
このアクチンFにCaイオンが結合したことで、ミオシンFの頭部(双頭になっている)が連結橋となり、アクチンFを筋節中央に引き込むように動かすのが第一ステップだった。

更にアクチンFをM線に近づけるためにはミオシン頭部が作った連結橋を一旦壊さなければならない。縮んだ筋は、一旦、緩まなければ何も始まらないのである。
要するに、連結を壊して再架橋することが繰り返されて、筋肉は収縮するのである。

子供の頃に、「猫じゃらし」と呼んでいた雑草で遊んだ記憶がある。
穂の部分を摘んで、軽く握ったり緩めたりを反復させると、握りこぶしから穂の部分が動いて上がってくる。穂先がミオシン双頭だとしたら、手掌の皮膚の部分はアクシンFで、CaとATPは握った手掌内の圧力変化である。そんなイメージだろうか。

「滑り説」はミオシン双頭の首振り運動によるものであるが、首振りを行うためにはアクシンFへの連結橋の破壊と再構築が繰り返される必要がある。
その架橋を壊す工程、つまり一旦は弛緩するのをATP(アデノシン三リン酸)が担っている。
そして再架橋は、Caイオンが担う。
ATPがこのステージでの主役だとしたら、Caイオンは重要な脇役として働いていることになる。
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by m_chiro | 2011-07-12 00:02 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)
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