「痛み学」NOTE44. 筋肉はどのようにして縮むのか②
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

44. 筋肉はどのようにして縮むのか
  ② 筋収縮の第一ステップでは「Caイオン」が活躍する


さて筋肉が収縮するためには、脳から「収縮せよ」という指令が出される。
このメッセージは活動電位としての信号である。
活動電位は末梢の運動ニューロンの末端に届く。
この運動ニューロン末端と筋線維との接触ポイントが運動点である。

運動点でシナプスされる運動神経の末端は神経終盤と呼ばれ、一本の軸策が筋肉内で100~150本に分枝し、骨格筋に入るとされている。
神経終盤にはミトコンドリアとシナプス小胞が存在する。
c0113928_22431592.jpg

上の図(医学図譜集(ネッター)の「筋骨格篇Ⅰ.第3章生理学」)は、ひとつの神経終盤が筋細胞膜にシナプスしている部分である。
運動点のシナプスには間隙があり、終盤のシナプス小胞からはアセチルコリンなどの神経伝達物質が間隙に分泌する。

アセチルコリンが筋細胞膜下にあるアセチルコリン受容体に達すると、イオンチャンネルが開口してナトリウムイオンを流入させて筋細胞膜を興奮さることになる。
この活動電位は細胞膜の外周に沿って移動し、筋線維束を横行する小さな管(T管:横行小管)から筋線維の内部に侵入する。T菅は、下図の筋線維を横断する赤い管である。
c0113928_22452996.jpg

このT菅は筋細胞膜に無数にある。細胞膜には小さな穴が無数にあって、細胞膜が細い管となって細胞内に入り込み、筋小胞体と接する(「足」と呼ばれる電圧受容体で信号を交換する)構造である。
すると、筋線維の長軸方向に走る筋小胞体に貯蔵されているCaイオンが、筋線維の細胞質に放出されることになる。

この筋小胞体はT小菅の両側を併走する終末槽の管に連絡されている。
放出されたCaイオンがアクチンFに結合すると、ミオシンFの頭部がアクチンFにくっついて連結橋が形成される。

ミオシンFの頭部は、次の下図で分かるように、頭が2つある双頭の分子構造である。この双頭の首の部分が曲がって、アクチンFを筋節の中央(H帯のM線のところ)まで引き込んで筋の収縮が維持されることになる。
c0113928_22503947.jpg


この筋収縮にカルシュームが関与していることを発見したのが、世界に誇れる研究者の一人である江橋節郎博士である。前回の記事に、タクさんがコメントとして江橋博士を紹介してくれている。
江橋博士の筋収縮に関わる有名な発見については、次の記事で紹介したい。
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by m_chiro | 2011-07-07 23:05 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(4)
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Commented by sansetu at 2011-07-09 09:55
こういうミクロの解剖図を見ると「やはり創造主はいるのではないか」などと思い頭がクラクラしますw。DNAの設計図だけでよくもこんな精密なパーツができるものです。いや、それよりも前に、誰がこんな精密極まる設計図をDNAに書きこんだの?とか思ってしまいます。
人間は複雑にして単純。脆くして頑丈。といった二面性を持っていますが、私たちがアプローチできるのは単純にして頑丈な側面であると思います。そこにアプローチすることと生活の歪みと精神性を正すことで、あとは複雑で脆い自動システムに委ねるしかありませんね。
Commented by m_chiro at 2011-07-10 21:56
筋肉が縮むのは当たり前と思っていることでも、ミクロの働きを知ると、この仕組みを作った創造主の存在を思ってしまいますね。仕組みは複雑でも、案外、単純な法則で動いているのかもしれません。

>そこにアプローチすることと生活の歪みと精神性を正すことで、あとは複雑で脆い自動システムに委ねるしかありませんね。

確かに、ご指摘の通りだと思います。身体の情報ネットワーク網に介入して自動システム系に働きかけることができれば、と治療家としては思いを馳せるのですが。。。。。
Commented by タク at 2011-07-10 22:25 x
マルチレスですいません。

>頭がクラクラしますw。DNAの設計図だけでよくもこんな精密なパーツができるものです。

はい、頭がクラクラします。汗、汗、汗。。。。。。。。
タンパク質の合成。→ 筋原線維の形成。

nebulinとN-WASPは協同してIGF-1により誘導される筋原線維のアクチン線維の形成をひき起こす
http://first.lifesciencedb.jp/archives/1887

>筋肉が縮むのは当たり前と思っていることでも

そして、大変恐ろしい検索です。 
これ、トレビアな検索かと思ったら、検索候補で上がってきます。

「アセチルコリン サリン」
Commented by m_chiro at 2011-07-11 19:30
アセチルコリンを阻害したら動かなくなります。
サリンはそういう恐ろしい毒性を持っている。あの事件が蘇ってきます。

逆に、動きはアセチルコリンの分泌を活発にしてくれるのでしょうね。

筋原線維の形成にIGFが関与ですか。。。。
タクさん、いつも興味深い情報を有難うございます。
勉強になりました。
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