「柔よく剛を制す...」か!?
先日来みえている患者さん、60歳過ぎの婦人の症例である。
昨年の秋頃に右膝が痛み出し、歩行でも体重移動が苦痛になった。正座もできなくなり、横座りが習慣になった。12月には頭を動かせない状態になったこともあったらしい。

年が明けて、3月頃には右ふくらはぎが度々「こむらかえり」をするようになり、内科外科医院を受診する。血流を良くする薬と塗布剤を処方され、血行が良くなる靴下を勧められて履いていた。
その後1週間ほど経ってから、右膝が腫れて熱感を持つようになり、夜間痛もあり鎮痛薬も処方された。

改善されないので、整形外科医院に転医する。
膝から水を抜く治療を3回行い、ヒアルロン酸の注入治療が続けられた。腫れは少なくなったものの曲げられない。今度は、左下肢外側部にしびれが出てきて、足底は感覚が鈍くなってきた。

5月末頃から、朝になると両下腿が浮腫み、パンパンに硬くなるようになった。
左下肢は痺れている。その上、寝返りや起き上がり、立ち座り動作などで腰背部に痛みが走るようになって治療にみえた。

身体の可動域が極端に悪い。体幹では左回旋が動きやすいものの、それ以外の動きは要背部痛を引き起こし可動域も制限されている。特に体幹伸展の可動域はほとんどない。
左下腿は外旋位に固着している。
頭蓋リズムをみると、まるでお地蔵さんの頭でも触っているようにリズム運動が消失している。
確かに、両下腿は浮腫んで、しかも硬い。

全身が関節も筋肉も固着状態のようである。
このような患者さんに、外からの強い圧刺激やアジャストメントを加えることはしない。
リスクはあっても、効果は期待できないからである。
したがって、こうした患者さんには、このステージでのストレッチ・エクササイズを勧めることもしない。
短縮し過ぎた筋のストレッチには技術が必要で、効果よりも逆に損傷させるリスクが大きいからだ。こうしたケースでは、むしろ神経学的な回復を狙って調整すべきだろう。

私としては、身体の内圧を引き出して身体の柔軟性や生体リズムを取り戻してあげたい。
身体のコアともいえるリズム運動の鍵は、深部において身体縦軸を構成している脳脊髄硬膜の律動、そして蝶形ー後頭底と仙骨が織り成す第一次呼吸リズムを呼び戻すことだろう。
身体後面の頭部の前後軸の律動には、大脳鎌のリズム運動の回復を狙いたい。脳脊髄硬膜という縦の身体軸を、横の深部の膜系が要所要所で支点を作っている。小脳テント、胸隔膜、横隔膜、骨盤隔膜が、その横軸の膜系である。
更に肋骨の可動であるが、これは呼吸運動を利用して肋骨の可動と呼吸リズムを促した。

2回目の治療で、日中の動きで腰背部痛が起こることもなくなって、階段が普通に昇れるようになった。それから治療を重ねるごとに、下腿の浮腫みが軽減し、ふくらはぎが揺れるようになり、下肢の痺れも消え、腰の痛みもなく通常の動きが出来るようになった。が、まだ本来の動きではない。
5回目の治療の時には、身体の柔軟性も大分回復し、「体が軽くなった」と話していた。
浮腫も6~7割減少している。が、右膝の完全屈曲はまだ出来ない。

治療はまだ継続であるが、こうした症例では外力をほとんど使わずに、身体の内圧を呼び起こす手法を用いた。
治療としては極ソフトな方法である。
それでも、あの可動域のない固着した身体がリズミカルな動きを取り戻した。

「柔よく剛を制す」とでも言える症例だろうか。
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by m_chiro | 2011-06-18 00:02 | 症例 | Trackback | Comments(0)
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