「二関節筋」を意識したストレッチ
私は患者さんへの在宅エクササイズをよく指導する。
これは正しい運動機能を学習させるだけではなく、自ら治そうとする意欲や管理意識を自覚させる意味も持っている。
ここ数年、「二関節筋」という概念を取り入れた運動やストレッチングを多用するようになった。

「二関節筋」の特性に気づかされたのは、実はロボット工学関連の著書である。
人型ロボットを創ることを目指した研究者たちが、ぶつかった問題。
それはヒトのようななめらかな関節の動きを作り出せないことにあったようだ。
そこでヒトの運動生理に答えを求めたのであるが、どうも関節が動力源ではないということに気づいたらしい。問題は、神経生理学の運動制御がテーマである。
ところが工学系の用語にあるのは「電動機制御」だという。「motor」と「motion」の制御の違いであるが、進化的にみると陸上の脊椎動物の特徴は「二関節筋」にあったことに気づくのである。今では、リハビリテーションの教育や臨床の現場でも「拮抗二関節筋の力学」が応用されつつある。

次の論文でも、二関節筋の概念的特徴が述べられている。
協調制御モデル(熊本水賴著)」

「二関節筋」は古くから知られた哺乳類から両棲類に普遍的に存在する筋肉である。ところが二関節筋は、両端の一関節筋群と協調活動をする。論文では、「ヒトや動物特有の四肢先端に於ける出力制御・剛性制御・軌道制御に貢献していることが理論的、実験的に明らかになった」と評価している。
しかしながら、二関節筋による四肢出力特性や運動制御特性への関わりが理解されているとは言い難い。

個人的な研究会参加やカイロプラクティック徒手医学会の活動を通じて、愛知医科大学の熊澤孝朗先生の研究室とお付きさせて頂いたご縁があった。
研究室の山口佳子先生からは、「筋学や関節疾患に関心があるようでしたら」と、愛知医科大学の丹羽滋郎・名誉教授をご紹介頂いた。
その時、熊沢先生が臨床家との交流をとても重要視して、研究に活かしておられたこともお伺いしたのであるが、丹羽滋郎もその中のお一人だったようである。
丹羽先生は人口膝関節の権威であったが、現在は愛知医科大学の運動養育センターの参与を勤められて筋学の普及に取り組んでおられるようである。

早速、丹羽滋郎先生のご著書「メディカル・ストレッチングー筋学からみた関節疾患の運動療法―」を取り寄せて読んだのだが、驚いたことに「二関節筋」の重要性がこの本の執筆の動機になっているエピソードが語られていたのだ。
関節疾患を筋学から見直したというのである。これまた何という因縁だろう。
今では、この本が私の在宅エクササイズの種本になった。
c0113928_941316.jpg

丹羽先生は「暮しの手帖」に長年にわたり「医学・健康ページ」に執筆してこられたようである。その中に次の一文がある。

腰痛や肩こり解消の鍵は、「筋肉」と「脳」にあります。筋肉は運動器のひとつですが、整形外科の教育のなかでも、筋肉のことを学ぶ機会はあまりなく、日常の診察で、骨や関節ほど重要視されてきませんでした。そして、日本の整形外科医の関心は、欧米に負けないレベルで、いかに的確な手術をするかということでしたから、画像にとらえやすい骨と関節の障害に、もっぱら注目してきたのです。そんな傾向が、慢性腰痛や肩こりに、五十肩という、ありふれた整形外科の「病気」に、これまで効果的な治療法や、痛みを軽くする方法を示せなかった、いちばんの理由ではなかったでしょうか。なぜなら、これまで整形外科医が治せなかったありふれた運動器の疾患を筋肉の側から見直し、その目で従来のストレッチのやり方などを工夫して、患者さんに実際にやっていただくと、予想もしなかったすばらしい効果を、この目でみることになったからです。


カイロプラクターも骨や関節とばかり言わずに、「筋学」をその機能的特性からも学び直す必要がありそうだ。
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by m_chiro | 2011-05-31 09:05 | 動態学 | Trackback | Comments(2)
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Commented at 2013-07-19 09:29 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by m_chiro at 2013-07-23 08:26
鍵コメさま、拙い記事にご教授を頂きありがとうございます。ご高説も参考にさせていただきます。ありがとうございました。
愚拙はカイロプラクテイックの仮説が未だよく分からずにいます。生涯一学徒のつもりで、日々の思索や勉強ノートとして書き綴ってはおりますが、勘違いや勉強不足が多々あろうかと思います。そんな記事にはまたご教授を頂ければ幸甚に思います。
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