神経障害性疼痛の補足
前回の記事(痛み学NOTE38.関連痛と神経障害性の痛みをどうみわけるか)について、日頃お世話になっているbancyou先生からコメントをいただいたので、記事にしてお返事とします。

「神経障害性疼痛」とは「Neuropathic Pain」の邦訳で「神経因性疼痛」とも訳されていますが、昨今の成書では「神経障害性疼痛」という訳の方がよく見かけられます。
同じ言葉の訳語なのですが、印象的に広い範囲の神経障害をカバーしているように思えて、記事には「神経障害性疼痛」を用いました。

「Neuropathic Pain」の国際疼痛学会の定義では、「神経系の一次的な損傷、あるいはその機能異常が原因となって生じた疼痛」(1994)とされていましたが、現在はその改定案である「体性感覚系に影響を与える損傷や疾患の直接的結果として生じている疼痛」としています。ニュアンスが少し変わって、体性感覚系への影響が重視されています。

「Neuropathic Pain」は難治性疼痛を代表する痛みとされていますが、何をもって難治性とするかというと第1に通常の鎮痛薬が効かないこと、第2に発症の機序が多様であることでしょう。末梢神経系、中枢神経系、交感神経系に病態をつくり、神経系の機能的および器質的変化を伴って発症するとされています。しかも、患者さんの心理的な要因が加味されて、複雑に交錯した機序で生じる痛みなのでしょう。

例えば、末梢神経系に神経の炎症や損傷が起こると、その神経の経路に電気生理学的変化や形態学的変化(例えば、神経腫やNaイオンチャンネルなどの発現が増加、エファプスと言われるシナプスを介さないニューロン結合など)が見られるようになります。
これは中枢性感作(脊髄レベル、大脳皮質レベルの感作)に可塑性の変化をもたらすことに繋がります。逆に、脊髄や脳の中枢神経系の病変に伴って起こる痛みもあるわけです。

交感神経系でもエファプス現象が起こるようですし、その終末からはプロスタグランジンが放出され、発芽現象も見られることもあるようです。

また、下行性疼痛抑制系の機能低下も神経障害性疼痛の範疇に入るのでしょう。

したがって、たとえヘルニアや脊柱管狭窄のような画像所見による神経への物理的障害痕が見られたとしても、実際に神経が機能的、器質的な変化あるいは感覚系の変容を発現していなければ神経障害性疼痛とはみなされないわけです。

そこで、問題になるのが臨床的な特徴です。神経障害性疼痛は、痛みの質や強弱など特徴的ですし、知覚異常は特に重要だと思います。自発痛(電撃痛、拍動痛、灼熱痛など)、痛覚過敏(閾値の低下)、アロデニア症状、自発性感覚異常、刺激による感覚異常、無知覚、知覚低下など、極めて特徴的です。急性あるいは亜急性に運動麻痺や筋脱力が進展して現れることもあるでしょう。

また、交感神経症状という臨床的特徴なども含めて考えると、痛み単独の症状は関連痛とみるべきだと思います。やはり徒手治療家としては、感覚変容のない痛み単独の症状に対しては関連痛、MPSとして対応すべきだろうと思います。

我々にとって絶対的禁忌ではない神経障害性疼痛に対しても、MPSを考慮して対応すべきであろうと思います。こうした神経障害性の難治性の痛みには多分に代償性のMPSが混在することがある、と考えるべきです。その混在するMPSに対処することで、痛み患者さんの生活の質や維持あるいは改善に寄与することができると思っています。
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by m_chiro | 2011-04-22 17:50 | 痛み考 | Trackback | Comments(4)
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Commented by bancyou1965 at 2011-04-22 18:02
守屋先生、ご教授ありがとうございました。

なるほどです。

また、学ばせていただきました。

臨床に反映できるように精進したいと思います。

これからも宜しくお願い致します。
Commented by シャルル at 2011-04-22 22:01 x
私の痛みも、渾然一体となっておりまする。
自分では、これは、関節の炎症系、これなMPS、これは脳の誤作動系・・・と区別ができます(たぶん)が、説明しても理解は得られません。
まとめて全部、治っちゃえばいいけれど、そういうわけにはいかないですね。
Commented by m_chiro at 2011-04-23 18:45
bancyou先生、おかしな点、誤りなど、ご指摘ください。

治療はなかなか難しいものになりますが、お互いに精進したいものですね。
Commented by m_chiro at 2011-04-23 18:50
シャルルさん、まとめて全部。。。と言う訳にいかないから難治性の痛みには学際的な方法が大事だと言われているのでしょうね。
でも、ご自身で、あれやこれやとセルフケアを怠らないシャルルさんの姿勢には感心します。シャルルさんのブログの記録を見ながら、大いに参考にさせていただいているのです。
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