膝窩筋と膝痛
急に春めいて、外に出る機会が多くなってきたせいだろうか。
膝の痛みを訴えてみえる患者さんが続いた。
どういうわけか、同じような患者さんが続くことがよくある。
人の生活のリズムが同じように変化したことなども誘因になるのだろうか、と思う。

その膝痛の患者さんは、一様に膝窩筋の問題を持っていた。
1人はバスケット・ボール部の高校生である。
2週間ほど前から左膝に痛みが出て、バスケット部の練習も辛くなってきた。
整形外科医院でX-rayに異常はなく、膝関節炎と診断されて消炎鎮痛剤を処方されていたが経過が思わしくない。
片足立ちや最大屈曲で痛みが出ていたが、次第に階段を降りる動作が出来難くなってきた。
外側ハムストリングの遠位部に、ジャンプ兆候のある強い圧痛があった。
膝窩筋部には圧痛と腫脹があり、まるでベーカー嚢腫のように腫れている。痛みを押して運動してきたからだろう。
ハムストリングの圧痛をリリースしても顕著な改善がみられないので、代償性の圧痛なのだろう。主要な障害は膝窩筋だろうと思われた。
治療は膝窩筋をターゲットに膜系のリリースを行い、部活動を休ませて在宅でのアイシングを指導した。部活動の再開まで3回/1週間の治療を要した症例だった。

もう1人は中年の婦人で、お茶会で正座していた後で公園を散歩していた時に左膝の両側が痛み出した。歩行を行わせると、立脚後期から遊脚期にかけて痛みを訴える。
圧痛が膝窩筋部にあり、リリースするとすぐに歩行での痛みが出なくなった。

また1人は農家のおばさんで、畑仕事に出て膝の内側下方が痛みだした。右膝の屈曲位で痛みが起こる。やはり圧痛が膝窩筋部にある。

三者三様の症状だったが、膝窩筋へのアプローチが効を奏したと思われる。

膝窩筋は、大腿骨外側上顆、外側半月板および腓骨頭の3部位に起始腱を持ち、脛骨後面近位部に付着する筋である。
c0113928_15364927.jpg

深部にある小さい筋であるが故に、単独筋の調査が難しいとされていた筋のようである。したがって、その機能がよく分からないとされているが、屈筋とする意見が圧倒的に多い。中には、伸筋という見方も少数ながらある。成書では、膝関節で下腿部を内旋、屈曲に作用するとされている。

私は膝関節の上下にある二関節筋群のコントローラーとして、膝窩筋が機能しているのではないかと推論していたので、屈曲位でも伸展位でも不都合が起こりやすいのではないかと推測していた。

ここに興味深い論文がある。東北大学大学院医学系研究科/運動機能再建学分野・大西秀明らが行った研究調査である。
「歩行および立位保持中の膝窩筋筋活動について」
この論文では、健常者男性10名の歩行および立位保持中における膝窩筋の筋電図から、その機能を明らかにしている。

それによると、歩行中では立脚初期、立脚後期と遊脚後期に強い活動を示している。
最も強いのは、立脚後期9.3%時点である。そして、立位保持中における筋活動は膝関節屈曲角度の増加(0度、30度、60度、90度)に伴って増加している。
要するに膝窩筋は、歩行時には遊脚後期から立脚初期にかけて膝関節過伸展を防御し、立脚後期から遊脚初期にかけては膝関節の屈曲可動に関与する。
立位保持時には脛骨の前方移動を防ぐように活動する、というものである。
共に閉鎖系運動連鎖に関して起こる作用のようである。

臨床上でみる膝窩筋障害の一面を納得できた論文であった。
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by m_chiro | 2011-04-18 15:43 | 動態学 | Trackback | Comments(0)
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