「体からのシグナル」(科学新聞社刊)
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科学新聞社の最新刊「体からのシグナル」を読んだ。
著者はジャン=ピエール・バレル(Jean-Pierre Barral,D.O)である。
バレルはフランスのオステオパスで臨床医でもある。
1999年の「Time」誌の特集号で、「新しい時代に期待される代替療法界のトップ100人」のうちの1人に紹介された。だからどうだという訳ではないが、代替療法界における体表的なドクターの身体観や健康感を知りたい、と興味を持った。

この本は一般向けに書かれたものであるが、内容は徒手治療家の手引にもなる。
臨床の現場で患者さんが縷々述べる不調の訴えを、身体機能の変調における指標としても学べる。私には根拠がよく分からない解説もあるが、指導管理上のアドバイスや愁訴の説明にも役立つ内容が豊富である。

バレルは内臓マニピューレーションの指導者としても有名で、本書の内容も各内臓臓器にかかわる身体機能との関係に集中している。
そこには心身一如の概念が織り込まれている。
その体と心が発する信号を正しく理解しよう、というのが本書の狙いでもある。

例えば、理由もなしに右肩が痛み出し、医師に「肩関節周囲炎」と診断された51歳の女性のケースを紹介している。彼女は鎮痛剤と消炎薬を処方されたが、「飲むとお腹が痛くなるし吐き気」がする。
バレルは、視診から「顔色が黄色っぽく、髪はやや脂性でフラット、肌にはつやがある」ことに気づく。触診では「肝臓と胆嚢の辺りが敏感である」ことを触知する。
ドクターの手は、肩ではなく肝臓に集中する。

患者さんは、「肝臓で、どうして肩が痛くなるの?!」と、当然のごとく問う。
その辺の推論を述べながら、肋骨内側の肝臓マニピュレーションを行い、胆嚢周辺を反復加圧して胆汁を排出させる手技を施すと、「肩はかなりの動きを取り戻しはじめる」。

治療後に、バレルはアドバイスを送っている。
「チョコレート、クリーム、ドーナツはだめ。アルコールには近づかないこと。野菜と果物は出来るだけたくさん取る。水は回数を多く、一度に少量を飲む。定期的に歩くようにして、ひと月もしたらまたおいでください」。

次の来院時に、忠告を守った患者さんの肩は「元どおりに動くようになっていた」。
閉経期の女性はエストロゲンがピークになり、肝臓に問題が生じやすくなるそうである。男性でも肝臓に問題が発生すると肩関節周囲炎が起こることがある、と記している。

肝臓のトラブルは肩への関連する症状だけに止まらず、腱炎やテニスエルボーのように肘の症状などとも関連することがある、とも述べていた。
私もこうした症例を度々経験したことがあって、納得した一節だった。

全編を通して「身体―栄養(化学)-精神(心理)」のトライアングルという視点から、著者の臨床的経験を踏まえて解説しているのであるが、感情反応と内臓機能との関連についての見解には不案内で何とも紹介し難いものがある。
それでも、感情であれ、内臓器官であれ、病的な一線は「過多」か「不足」に対する身体反応であるとする見方には納得させられる。

こうした内容が、主な内臓器全般について症例をあげて解説しているので、とても興味深く読めた。
体のシグナルとは、つまりはヒトの情報系の所作である。
ヒトの情報系には2つある。ひとつは「神経系」で、もうひとつは「遺伝子」で、そこには「流通する場」と「変換・翻訳する場」がある。
情報の流通については、多すぎるか、少なすぎるかのバランスが大事なことがよく納得できてくる。
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by m_chiro | 2011-04-06 23:32 | Books | Trackback | Comments(2)
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Commented at 2011-04-07 10:21 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by m_chiro at 2011-04-07 22:01
鍵コメ様、恐れ多いことでございます。
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