記事の訂正
記事の校正加筆

いつもお世話になっているbancyou先生が、3月12日のご自身のブログの記事で私の記事を取り上げて下さった。この記事は、科学新聞社発行の「カイロジャーナル70号」に掲載されたものである。この原稿は一部を加筆校正したのであるが、発行日の関係で訂正が反映されなかったので、ここに青字で校正個所を示しておきたい。

bancyou先生にはお目にかかったことはないのだが、メールやブログを通じて得た同業の良き仲間と思っている。私の拙い記事も再三ご自身のブログで紹介下さり恐縮の至りである。このような痛みの患者さんに真摯に痛みの向き合っておられる先生方との出会いも、私にとっては得がたい財産になっている。

感謝を込めて、以下に訂正個所を提示しておきます。

異所性発火(放電)とは何か
神経の伝導信号は電気的な発火(活動電位)に依存している。本態は膜電位の急速な変化によるもので、そのルートは受容器と脳を結んでいる。上行性には感覚が伝えられ、下行性に運動がもたらされる。その活動電位は膜のイオンチャンネルに依存した静止段階(-40~90mVの陰性膜電位:分極)からの脱分極(陽性方向への立ち上がり:活性化)と再分極(正常な陰性の静止膜電位の再獲得)の2つの段階がある。
 侵害受容器に閾値を越えた刺激が加わると、その信号は脱分極と再分極を頻発しながら末梢から脊髄に入り、脳に向けて上行する。これは正常な信号の発火伝導であるが、異所性発火はこの正規の生理学のルートを辿らない。受容器からの信号とは無関係に発火放電が起こる。
 故・横田敏勝教授(滋賀医科大学)は、「痛みのメカニズム」で次のように解説している。「痛覚受容器を介さずに神経線維からインパルスが発生することを異所性興奮という。異所性興奮が生じる可能性が高いのは、脱髄部および傷害された末梢神経の側芽と神経腫である(211頁)」。
異所性興奮のキーワードは、何と言っても「発芽」や「神経腫」といった現象であろう。「発芽」や「側芽」といった現象は、切断や傷害された末梢神経を修復する機転としての神経の伸長現象でもある。「神経腫」は、末梢神経の切断によって近位端と遠位端に近い部位で軸索の崩壊が起こる変性である。また脱髄は、有髄神経線維が長期間にわたる圧迫に晒されたことによって起こる現象であるが、主に運動線維と骨格筋の反射調節に関わる筋求心性線維などが障害される。したがって麻痺や異常感覚の徴候がみられる。ただし、Aδ侵害受容線維の脱髄部にNa⁺チャンネルが発現すると自発的に興奮し、痛みなどの異常感覚が生じるとされている。
では、Na⁺チャンネルはどのようにして発現するのだろう。末梢神経が切断・脱髄や傷害されると、後根神経節で各種のイオンチャンネル(中でもNa⁺チャンネルが重要)や変換チャンネルが合成される。この切断および傷害された神経線維では、修腹機転として損傷部位に「膨大部」や「発芽」現象が起こるわけだが、その軸索の膜にDRGで合成されたチャンネルが嵌め込まれて広がる。こうして異所性興奮としての痛みが起こる。
要するに、異所性興奮は末梢神経の切断を含む傷害に伴うスパイク放電のことで、その病態は神経原性の痛みであることがわかる。さて、菊地臣一教授は根性痛とされる末梢性の痛みを、この「異所性発火」にその機序を求めているのである。
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by m_chiro | 2011-03-13 10:21 | 痛み考 | Trackback | Comments(9)
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Commented by bancyou1965 at 2011-03-13 10:41
先生、地震お見舞い申し上げます。
酒田も大変だったのですね。
同じ日本でこちらは全く何事もなく過ごせてる事が、何か心苦しくもあります。
記事、訂正させていただきます。
Commented by m_chiro at 2011-03-13 19:41
bancyou先生、ありがとうございます。
巨大地震は、酒田はほぼ1日でほとんど平常になりました。今日もガソリンスタンドは1kmの長蛇の列で、10リットル限定です。その位のことは、未だにライフラインも回復していない被災者からみたら何てことありません。一日も早い復旧を願うばかりです。TVで状況を見るたびに、その悲惨さに悲しくいたましい気持ちになります。ホントに心苦しい思いですね。
Commented by タク at 2011-03-16 21:52 x
>Na⁺チャンネルが発現すると自発的に興奮し、

どの神経線維にも、個々のニューロンには前シナプスに反応するためのNa⁺チャンネルがあるはずです。
それが、増えることに対して、そうならそうだとします。

通常non-NMDA受容体は、グルタミン酸でopenになり、脱分極しますが、ATPなどエネルギーを使って、Na⁺は細胞外に排出され、また再分極する。
また、抑制系のシナプスである、BZやGABAなどがCl-チャンネルを開き、再分極の収束へ向かう。

これが、とてつもない周波数で繰り返される。つまり

↓です。

>脱分極と再分極を頻発
これが重要でしょう。パルス、生理学はインパルスですね。
ニューロンは、各受容器でgenerateされたパルスコードを正確に伝える役目をするが、ニューロン自体が、パルスコードをgenerateするかが、疑問であり、そんな高等な作業をする細胞に変位するか謎なのです。
Commented by タク at 2011-03-16 21:53 x
熊澤孝朗先生の、慢性痛の中枢系ではMNDA受容体のMgの蓋がはずれて、Ca+が更にニューロン内に流入し電位が+なると説明されてるが、以下の説明が無い。
その後のインパルス形成の為に、必ず、再分極しなければならない。-にならないといけない。

動物実験でパッチクランプ法などで、電圧変化をオシロスコープ等で観察して、様々な波形が観測できたとして。
波形そのものは、痛みとは関係ないのであり、何回、脱分極を、一定周期当り、起きたが問題でしょう。その為に一度再分極しなくてはならない。

このことから、チャンネル増加などの+増加に対して、-化するシステムは増加してなく、そのバランスが中枢系の慢性痛のKeyではないかと、私のSFティックな考えなのですが。。。(^^;
Commented by タク at 2011-03-16 21:54 x
痛みは符号化された信号でなければならいのです。侵害受容器はセンシングすると共にコード化するのです。
水村和枝先生の言うところのTransducer。

●痛み受容の生理学 痛み受容器における符号変換・感作の機構 日本ペインクリニック学会誌巻:8 号:3 頁:159
名古屋大学環境医学研究所神経性調節分野  水村和枝
http://www.journalarchive.jst.go.jp/jnlpdf.php?cdjournal=jjspc1994&cdvol=8&noissue=3&startpage=159&lang=ja&from=jnltoc

ここで、まだ誰も言ってないだろうと思う問題を言ってみたいと思います。
一定時間当りのインパルスを問題にするなら、人間の体には、ミリ秒くらいの時間を制御してる時計の様なシステムが在るのではないかと。この時計が無いと、一定時間をカウント出来ない。PCにはクロック信号がある。
Commented at 2011-03-16 21:56 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by m_chiro at 2011-03-17 15:43
タクさん、示唆に富んだコメント有難うございました。

>このことから、チャンネル増加などの+増加に対して、-化するシステムは増加してなく、そのバランスが中枢系の慢性痛のKeyではないかと、私のSFティックな考えなのですが。。。(^^;

なるほど面白いですね。私は受容器の閾の設定をどこでやっているのか、とても気になっておりましたが、インパルスをカウントする時計の推論といい、制御系のシステムがどうなっているか、気になるところですね。
とても参考になりました。有難うございました。

熊澤先生のVTRは、確か以前にタクさんが加茂先生のところで紹介しておりましたね。その時に早速ダウンロードして保存しております。その時の内容と同じものだと思うのですが。。。。。もう一度確認してみます。
有難うございました。

Commented by タク at 2011-03-17 22:53 x
私は、文系なので。わかりません。

どなたか、これを正しく理解して人を苦しめる痛みからの解放のために提示します。
私の直感ですが、より痛みの本質に迫ってるのでないでしょうか。医師はこのような事を発想しないでしょう。

http://www.cns.atr.jp/~doya/naist/mathsci/icns03.pdf
http://www-aka.ise.eng.osaka-u.ac.jp/~akazawa/bitext/ch5.pdf
Commented by m_chiro at 2011-03-18 12:38
タクさん、文系なのですか? てっきり理系の人かと思っていました。

また、銅谷先生の論文、有難うございました。
私は医学的な神経細胞の話よりも、個のシステム系における情報伝達系の方に関心があるのですが、計算理論が入ると難解でさっぱり。。。です。医学の解説よりも、理工の研究者の解説の方が腑に落ちます。余り単純な切り口にすると、逆に本質を見失うかもしれませんが、分かりやすいので関心を持っている領域です。タクさんの発想をとてもうれしく感じました。また、SF的(?)着想、教えてください。
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